災害時に多発する傷病者の受け入れや、災害派遣医療チーム(DMAT)での支援などの役割を担う災害拠点病院。県内では県立中部病院など8施設が指定されており、災害時の地域医療の中心的な役割を担う病院として位置付けられている。県民の命を救う“とりで”とされる役割に期待の声がある一方、被災時のマニュアルが整備されていないことや、県内に給水車が1台しかないこと、水道や電気などのインフラが機能しなくなったときの対応など、課題は山積している。(社会部・知念豊)

大災害発生時の患者受け入れ訓練に取り組む職員=1月17日、那覇市与儀・沖縄赤十字病院

災害発生を想定した訓練で、各担当者との連絡や設備の機能確認などの対応に追われた対策本部

災害時を想定し、救命の処置が必要な患者への対応に当たる職員

大災害発生時の患者受け入れ訓練に取り組む職員=1月17日、那覇市与儀・沖縄赤十字病院 災害発生を想定した訓練で、各担当者との連絡や設備の機能確認などの対応に追われた対策本部 災害時を想定し、救命の処置が必要な患者への対応に当たる職員

■被災時マニュアルの策定遅れ 給水車は県内に1台

 国は2011年3月11日の東日本大震災を教訓に、被災した病院が診療を続けるための「事業継続計画」(BCP)と呼ばれるマニュアル作りを促している。だが県保健医療政策課によると8日現在、県内の災害拠点病院でマニュアルを策定している施設は一つもない。

 全国の災害拠点病院715施設のうち、BCP策定済みは322施設(45%)。県内では8施設のうち、6施設は策定中だが2施設は予定も立っていない。大震災から6年たっても、県内ではBCPの整備が進んでいないのが現状だ。

 県の担当者は作成が遅れている理由を「インフラの被災が病院にとって大きな課題となり、マニュアルの作成に時間がかかっている」とした上で「災害拠点病院は災害時の地域医療の中心を担う。診療を継続していくためのマニュアルの早期策定を呼び掛けたい」と話す。

 災害拠点病院の一つで、1月に災害対応訓練を実施した沖縄赤十字病院の佐々木秀章救急部長は「被災後に診療を続けるには、病院だけで解決できない問題がいくつかある」と指摘。「県内はインフラが弱いので、災害時における病院運営は困難がつきまとう。当病院では1日に100トンの水を使うが、地震や津波で水が止まった場合は一病院だけではどうしようもない」と訴える。

 同病院では常時170トンの水を備蓄しているが、佐々木部長は「2日も持たない。災害時には10トンの水を運ぶ大型消防車が、10回給水する必要がある。ここより大きな病院だと2~3倍の使用量になるが、給水はどうするのか」と不安の声を漏らす。

 県の担当者によると、災害に備え、県水道局や名護市などの市町村に容量0・5トン以下2・0トン以上の備蓄用の水タンクが38個あるが、災害時に欠かせない給水車は県内で1台しかないとし「災害時には病院や避難所に優先して送水しないといけないが、備蓄タンクの容量ではとても間に合わない。給水車も含め、今の状況では十分な備えだとはいえない」と話す。

 島しょ県である沖縄は、他府県に比べ患者や支援物資の搬送が難しいなど、他にも切実な課題がある。県は、災害直後の初動対応などをまとめた「県災害医療マニュアル」の3月中の策定に向けて準備を進めており、担当者は「課題解決に向け、県や病院でできる部分はしっかりやっていきたい」と話した。