「潮の匂いは世界の終わりを連れてきた」。東日本大震災で被災した宮城学院女子大4年の片平侑佳さん(22)=宮城県東松島市=は震災翌年、津波で奪われた日常生活や友人、被災者を取り巻く社会への思いを「潮の匂いは。」という詩につづった

▼一節には「自分のことしか見えない誰かは響きだけあたたかい言葉で僕たちの心を深く抉(えぐ)る。“絆”と言いながら」とある。「絆」や「がんばろう日本」という聞き心地のいい言葉だけの応援が被災した人々を時に傷つけ、追い込んでいた

▼11日、大震災から6年を迎えた。現在も避難者は約12万3千人にのぼり、うち約3万6千人がプレハブの仮設住宅で暮らしている。福島第1原発事故があった福島県では多くの人が県外で避難生活を送っている

▼原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中学生がいじめを受けていたことが昨年11月に明らかになったことをきっかけに同様のいじめが各地で次々と表面化した

▼被災地の復興だけではなく、放射能に対する正しい情報と被災の記憶をいかに伝え、知識を普及させるかが問われている

▼「潮の匂いは。」は「一人で生きる世界は、あの日の海よりもきっと、ずっと冷たい」と記す。被災者を孤立させず、震災の記憶の風化を防ぐのは6年前の未曽有の災害を目撃した私たちの責務である。(与那原良彦)