この記録を読みながら、ぼくは何度も天を仰ぎ、そして涙した。本書には、沖縄でキャバクラや「援助交際」という世界で働き、生計を立てている10代から20代の少女たち6人の日常が刻明に記録されている。

「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」(太田出版・1836円)/うえま・ようこ 1972年沖縄県生まれ。琉球大教授。専攻は教育学。生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究。1990年代後半から2014年に東京で、以降は沖縄で少女たちの調査・支援に携わる。共著に「若者と貧困」

 「米軍基地のフェンスに囲まれ、大きな繁華街のある街」で育った著者は中学時代、満たされない思いを抱えていた。暴力をはらむ街で、それがふりそそぎ友人の少女たちが疲れ切っていく中で、15歳の時に地元を離れた。

 上京した大学院では、少女が大人になるプロセスの研究に集中していくのだが、著者はその背後に沖縄の少女たちの悲しみと苦しみを感じ取っていた。10年前に沖縄へ戻った。そして著者と同じ街で暮らす少女たちに寄り添い、生きることを決心する。

 こうして出会った少女たちは、家族や恋人、知らない男たちから暴力を受けながら育ち、そこからひとりで逃げ、自分の足場をつくりながら必死に生きざるを得ない状況にあった。著者は、そのプロセスに関わり、支援しつつ記録していく。

 2012年に出会った少女は6人家庭に育っていた。「聞き取り」をしていくうちに、兄の暴力から逃れて16歳で妊娠、そのうち離婚して子を取られていた。次に出会った男性からも激しい暴力を受ける。逃げ続け、ひとりで生きていく道を探していた。著者はこの少女と生活保護の申請やシェルター保護について行政機関をともに訪問するのだが、少女の訴えが受けとめられないという現実に憤る。また、中学生の少女が年齢を偽って援助交際をせざるを得ない現実にも対峙(たいじ)している。

 本書には、こうした少女たちとの会話が採録され、臨場感にあふれている。暴力によって奪われていく、人間の尊厳と暴力連鎖再生産の悲しさ。さらに、暴力をふるう男たちの背後にある巨大な暴力装置としての、国家や軍隊。著者は、沖縄の少女たちが自立して生きていくための、新たな地平を築くべく歩き始めている。そうした研究姿勢に共感しつつ、今後の活動に注目していきたい。(加藤彰彦・沖縄大学名誉教授)