森友学園の籠池泰典理事長が、大阪府豊中市の旧国有地に建設していた小学校の認可申請を取り下げ、理事長を退任すると発表した。

 前日まで「府の認可妥当を前提として建築している」と開校に執念を燃やしていただけに、急転直下の白紙撤回は奇々怪々。教育に対する持論を展開し、自らに批判的なメディアに責任を押し付ける会見も異様な雰囲気だった。

 一連の問題発覚後、初めて開いた記者会見で籠池氏は「苦渋の決断だった」と述べ、国会での追及や報道によって敷地内のごみ搬出が遅れ、寄付金が集まりにくくなったと説明した。

 評価額の14%という格安で学校用地を取得したことなどについて、国会議員の口利きを否定。「安倍首相夫妻からも何もしてもらってない」と語った。

 一方、金額の異なる3通の工事請負契約書の問題に質問が及ぶと、説明はしどろもどろ。国から多額の補助金を受け取るために建築費を水増ししたのではないかという疑惑や、不透明な土地取引など肝心なことは何一つ明らかにされなかった。

 恨み節に終始し、都合の悪い質問には答えようとしない態度はいかにも身勝手である。

 認可申請や建築工事などに関し次々と噴出する疑惑に、府私立学校審議会は「不認可」の意向を固めていたといわれる。

 認可申請を取り下げたからといって、問題の幕引きにはならない。疑問は深まるばかりだ。

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 会見で籠池氏は「いつの頃からか私の信条が(問題の)中心となり、袋だたきに遭うようになった」と訴えた。

 森友学園が大阪市内で運営する幼稚園は「教育勅語」を暗唱させることで知られる。「教育の神髄を伝えている」との理由で導入したというが、戦前の軍国主義教育を否定した憲法、教育基本法の下で、子どもたちが教育勅語をそらんじる姿は異様である。

 教育勅語は普遍的な意義を持つ道徳を説く一方で、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」とうたう。戦争になったら天皇のために命を投げ出せとの教えだ。戦後、衆参両院が排除・失効を決議したのは、国民主権の現代にそぐわないからである。

 籠池氏は「再びチャレンジする」と別の場所での学校建設を目指す意向を示している。いずれ出直したいと言っているのだから、なおさらこれで幕引きとすることは許されない。

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 安倍晋三首相の妻昭恵さんが森友学園が計画する小学校の名誉校長を務めていた問題は、自民党内からも不適切だったとの声が上がっている。

 学園の幼稚園教育を巡って、教育勅語を是認する答弁をした稲田朋美防衛相への批判も強まっている。

 政府与党としてきちんと解明すべき問題なのに、自民党が籠池氏の国会招致に消極的なのは理解に苦しむ。

 国民の疑惑を晴らさなければ政治不信は強まる。与野党協力して籠池氏の参考人招致を実現させるべきだ。