沖縄県久米島のコミュニティー放送局「FMくめじま」に二つの人気民謡番組がある。さとうきび農家の稲嶺盛英さん(80)がパーソナリティーを務める「マンドリンde民謡」、もやし農家の惣慶長吉さん(67)の「長(ちょう)さんと民謡ぬかじかじ」だ。いずれも“素人DJ”ならではの、素朴で温かみのあるしまくとぅばの語りが持ち味だ。(学芸部・高崎園子)

自宅でマンドリンを弾く稲嶺盛英さん(左)とスタジオでマイクに向かう惣慶長吉さん

マンドリンで民謡、絶妙にマッチ

 「はいさい、ぐすーよー。ちゅーやはじみんかい、二見情話ちちきみそーり」(皆さま、こんにちは。今日は最初に二見情話を聴いてください)

 水曜日午後0時半から30分間の「マンドリン-」。稲嶺さんがマンドリンの演奏に合わせて民謡を歌う。

 もともと三線の名手。ラジオで耳にした音色に魅せられ、20歳すぎからマンドリンを始めた。これまで録りためた120曲から毎回7曲ほどをかける。イタリア生まれの楽器のもの悲しげな音色が、稲嶺さんの滋味のある歌声に絶妙にマッチする。

 曲の紹介は沖縄本島のしまくとぅばだ。稲嶺さんの祖父は本島出身。生活苦から新天地を目指し移り住み、農業を始めた。稲嶺さんも同じ境遇の知り合いが多く本島のしまくとぅばを話す。

 祖父は優しいが厳格だった。ある時稲嶺さんが、目上に対する返答の敬い言葉「うー(はい)」でなく、「いー」と返事した。「やーや、わんといんとぅしやんなー」(お前は俺と同じ年か)と怒られた。

 本島と久米島の言葉の違いを「ぬーが(何?)」を「ぬーがー」と伸ばしたり、「まーかいが」(どこに行くの?)を「まーかてぃが」と言うと説明した。

 「昔は会話すべてがしまくとぅばだった。今の50代、60代の人は全部ヤマトグチでしょ。自分たちの言葉は残していかないといけない」。自ら小学2年の双子の孫娘に伝える。「学校でも教えてほしい」と期待する。

 「どぅーぬしまぬくとぅばわしんねー、うやぬちらんわしんどー(自分の故郷の言葉を忘れることは、自分の親の顔を忘れること)」と力を込めた。

優しい語り口が評判の「長さん」

 愛称「長さん」を冠した惣慶さんの番組は毎週土曜日午後5時から30分間、リスナーのリクエストを募る生放送だ。インターネットを通して本島や県外で聞くリスナーからもファクスやメールが届く。軽妙で優しい語り口は「癒やされる」と評判だ。

 「県外出身のリスナーもいるけど気にせずしまくとぅばで話す。沖縄の言葉の文化を伝えたいから。少しでも覚えてくれたらいい」

 番組では丁寧なしまくとぅばを使うように心掛ける。例えば「食べて」と言うときも、「かめー」ではなく「うさがみそーれー」。「おもてなしとありがとうの気持ちを込めている」

 久米島で生まれたが、小学生のころ本島南部に引っ越した。31歳のときUターンしたため、話すのは本島のしまくとぅばだ。

 スーパーで「長さん、毎週ちちょーんどー(聞いているよ)」と直接リクエストをする高齢者もいる。「最初から最後までしまくとぅばという番組は少ないからね」。番組を心待ちにするリスナーのために毎週マイクに向かう。