政府はアフリカの南スーダン国連平和維持活動(PKO)に派遣中の陸上自衛隊施設部隊(約350人)を5月末に撤収させる方針を決めた。

 安倍晋三首相は現地の治安情勢には触れず、菅義偉官房長官は治安の悪化による撤収を否定している。だとすれば、なぜ今、唐突に撤収を公表したのか。

 政府が撤収を巡り公表した「基本的な考え方」には、国連が昨年8月、首都ジュバの治安改善を任務とする新たなPKO部隊の創設を決定。部隊展開が始まり、安定に向けた取り組みが進みつつあることを挙げている。

 昨年7月には部隊の宿営地があるジュバで政府と反政府勢力の間に大規模な戦闘が発生し、270人以上が死亡した。現地の部隊が同じ時期に作成した「日報」にはジュバで「戦闘」があったとする記述が何度も出てくる。

 政府はこれまでジュバの情勢について「比較的落ち着いている」との認識を繰り返したが、それと矛盾する日報の内容である。

 国連のアダマ・ディエン事務総長特別顧問も昨年11月にジェノサイド(民族大虐殺)に発展する可能性に言及。今年2月にも再度「大虐殺が起きる恐れが常に存在する」と警告する声明を出している。

 国連難民高等弁務官事務所によると、隣国への難民は150万人を超え、昨年だけで76万人以上が逃れている。

 現地の治安情勢が不安定なのは明らかであり、本来であればもっと早く撤収すべきだったと言わざるを得ない。

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 安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」など自衛隊の新任務が閣議決定され、実際に付与されてから約3カ月。南スーダンでのPKOは安保関連法に基づく「駆け付け警護」などの実績づくりだったとの疑念が消えない。

 現地から送られてくる日報に「戦闘」という表現が頻出することについて、稲田朋美防衛相は、部隊の撤退が必要となる「戦闘行為」には当たらず、「武力衝突」だと強弁した。「(戦闘行為が)行われたとすれば9条の問題になるので、武力衝突という言葉を使っている」と語るに落ちる答弁もしている。

 黒を白と言いくるめるような国会答弁は自衛隊員の生命に関わる問題だけに、看過できない。実際は治安の悪化が続き、憲法9条の枠をはめる「PKO参加5原則」が崩れている疑いが濃厚である、ということではないのか。

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 安倍首相が陸自の撤収を表明していた同じ時間帯に「森友学園」の国有地払い下げ問題で、当の理事長らが記者会見していた。突然の撤収表明は「森友隠し」では、と指摘されるゆえんである。

 現地の治安の悪化を否定し、撤収に消極的だった政府が突然、撤収にかじを切ったのはなぜか。政府は撤収の判断の根拠を国民に詳しく説明する義務がある。

 南スーダンへの陸自の派遣が始まったのは民主党政権時代の2012年1月からで、すでに5年が過ぎている。日本は憲法9条の下でどのような国際貢献を果たすべきか、改めて検証する必要がある。