名護市辺野古の新基地建設を巡り、3月末に期限を迎える岩礁破砕許可に関し沖縄防衛局は15日午後、新たに許可申請する考えはないと県に伝えた。防衛局の茂籠勇人調達部長が県庁を訪れ、島尻勝広農林水産部長に文書を提出した。

ブロックが投下される辺野古の海(資料写真、2017年2月撮影)

ブロックが投下される辺野古の海(資料写真、2017年2月撮影)

 防衛局は許可申請をせず、4月以降も工事を続ける。県が強く反発するのは必至で、県は無許可の状態での工事を確認した場合、県漁業調整規則違反に当たる可能性があるとして、行政指導や検察庁への告発などを含め、対抗策を打ち出す構えだ。

 翁長雄志知事はこれまで防衛局へ新たな申請が必要だと伝えてきたとした上で、「防衛局の不誠実な対応は極めて遺憾だ」とのコメントを発表した。16日に会見を開き今後の対応などを説明する。

 防衛局は、名護漁業協同組合が今年1月、シュワブ沖の常時立ち入り禁止区域「臨時制限区域」(561ヘクタール)全ての漁業権を放棄する手続きを取ったことから、県漁業調整規則に基づき「『漁業権の設定されている漁場内』には当たらず、知事の許可を受ける必要はなくなった」としている。

 また、水産庁長官の「漁業権は消滅し、岩礁破砕などを行うために許可を受ける必要はない」との文書も合わせて提出した。文書は防衛省の照会に14日付で回答した。

恣意的な解釈、法の抜け道探す姿勢

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府が岩礁破砕許可は不要との考えを県へ伝えたのは、翁長雄志知事が持つ、工事を止めるための知事権限を事実上無効化し、新基地建設を押し進めたい狙いがある。

 政府は新基地建設工事に着手するため2014年8月、仲井真弘多知事(当時)に岩礁破砕許可を申請した。だが今回は、翁長知事が工事を止める手段の一つに岩礁破砕許可の不許可などを挙げたことで、政府は工事の中断を懸念。昨年11月に名護市漁協の漁業権放棄に向け動き、そもそも岩礁破砕許可は不要という「奇策」ともいえる理論を打ち立てた。

 政府が新基地建設に関連し、恣意(しい)的ともいえる法律や条例の解釈を適用したのは今回が初めてではない。

 15年10月、翁長知事の埋め立て承認取り消しに対し、防衛局は本来、私人の権利救済を目的とする行政不服審査制度を利用し、身内である国土交通相から承認取り消しの効力を一時停止する決定を受けた。

 これらの政府の姿勢からみえるのは、是が非でも新基地建設工事を進めるため、常に法の抜け道を探す姑息な姿勢だ。

 安倍政権は、沖縄の負担軽減や新基地建設に向け「沖縄に寄り添う」「丁寧に説明する」「できることは何でもする」と繰り返す。

 今、辺野古で起きていることを直視したとき、三つのワードはいずれも全く当てはまらない。政府に求められるのは、国の機関同士で新基地建設を進めるための解釈のすり合わせではなく、沖縄に向き合い、民意に耳を傾ける姿勢だ。(政経部・大野亨恭)

 

埋め立てと関係ない

 熊本一規・明治学院大教授(漁業法)の話 名護漁協が共同漁業権の一部放棄を決めても、それは私権としての権利を手放したということにすぎない。公法としての漁業法が定める漁業権の内容を変えるには、都道府県知事の変更免許が必要だ。水産庁も従来、同様の見解だった。今回、共同漁業権の一部放棄で漁業権が消滅したとするなら、見解を変えたことになる。

 共同漁業権の一部放棄が意味するところは、その海域では妨害排除請求権を行使されず、誰もが自由に漁業を営める水面になったということだ。埋め立て事業者が自由に埋め立てできるかどうかということとは全く関係ない。

 漁業法は漁業生産力を向上させるためにある。埋め立て計画のために漁場を縮小するような変更免許は漁業法上、不可能だ。