名護市辺野古への新基地建設を進めるためなら、法令の解釈を恣意(しい)的に変えることもいとわない。そんな「法治国家」の姿勢が改めて浮き彫りになった。

 新基地建設工事で、3月末に期限を迎える岩礁破砕許可を巡る国の動きである。

 沖縄防衛局は15日、新たに許可申請する考えがないことを県に文書で伝えた。翁長雄志知事が、工事を止める手段の一つとして岩礁破砕の不許可を挙げたためだとみられる。4月以降も工事を続ける予定だ。

 国の認識はこうだ。

 名護漁業協同組合は今年1月、シュワブ沖の常時立ち入り禁止区域「臨時制限区域」(561ヘクタール)全ての漁業権を放棄する手続きを取った。県漁業調整規則では、漁業権の設定されている漁場内において岩礁を破砕しようとする者は、知事の許可を受けなければならない、とある。漁協の放棄手続きによって漁業権は消滅した。だから許可申請は必要なくなった。

 一方、県の認識は異なる。辺野古の工事海域は名護漁協が持つ漁業権の一部で、この部分のみを放棄し漁業権を縮小するには、知事の変更免許を受けなければならない、との考えだ。

 翁長知事は16日に会見し、工事の差し止め訴訟を検討していることを明らかにした。4月以降も国による岩礁破砕行為が確認された場合、提訴に踏み切る意向だ。

 辺野古の新基地建設を巡る国と県の対立が、再び法廷闘争に持ち込まれることが確実となった。

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 気になるのは、防衛局が岩礁破砕許可の申請をしないと県に伝える際、水産庁長官の「漁業権は消滅し、岩礁破砕などを行うために許可を受ける必要はない」との文書も併せて提出した点だ。防衛局にお墨付きを与えた格好となる。

 ただ、漁業法の専門家は今回の件では、都道府県知事の変更免許が必要との考えを示している。水産庁も従来、同様の見解だったという。

 なぜこれまでの見解を変えるに至ったのか。知事権限の無効化を狙った政府の意向に、水産庁が同調したのではないか。翁長知事が「辺野古案件のために恣意的に変更されたとしか受け取ることができない」とコメントしたのも当然だ。

 思い出されるのは、翁長知事が埋め立て承認を取り消した際、防衛局が本来は私人の権利救済を目的とする行政不服審査制度を利用し、身内である国土交通相から承認取り消しの効力を一時停止する決定を受けた件だ。

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 那覇空港第2滑走路の建設工事の海域でも、辺野古と同様に一部は漁業権が消失している。こちらは2月の岩礁破砕許可の期限切れを前に、沖縄総合事務局が更新を申請した。事業者はどちらも国の機関だ。一方のみ申請が不要だとするのは無理がある。二重基準だと言わざるを得ない。

 菅義偉官房長官は「わが国は法治国家」と繰り返し、手続きの正当性を主張する。しかし、ご都合主義の法令解釈がまかり通るようでは、法治国家の名が泣く。