徹底的に悪事の限りをつくす人が1周回って誠実な人に見えてしまう。それが映画の魔力であり、魅力でもある。

「アシュラ」の一場面

 「裏社会・金・権力」、欲にまみれたイケナイ三角関係。でも、このカミソリの上をはうような、一歩踏み外せば破滅すると分かりきった危険な社会で、いつかトップに君臨する日を夢見て365日、悪事の限りをつくす男たちをものすごく安全な映画館で眺めるのは、至福のひと時。

 映画「アシュラ」は私利私欲にまみれた悲しい男たちの挽歌(ばんか)。街の利権を牛耳る市長、市長の犬に成り下がった刑事、正義を振りかざし、手段を選ばない検事。自らの欲望へ悲しいほどに誠実な男たち。彼らにとっての正義はもはや生き残ること。愛が彼らを救うことはないのかしら、と残虐シーンに胸を痛めながらも、トキメキが止まらない。(桜坂劇場・下地久美子)

◇桜坂劇場であすから上映予定