4年前、元官房長官の野中広務氏にインタビューをした時、安倍寛氏という政治家の存在を知った。戦前、反戦を貫き、軍部主導の政治を徹底的に批判した人物。安倍晋三首相の祖父にあたる

▼安倍首相の父で外相などを歴任した晋太郎氏は「俺は岸信介の娘婿ではない。安倍寛の息子なんだ」と誇りにしていたという。晋太郎氏もハト派だったと述懐した野中氏は「安倍さんは寛さんの孫ということを考えてもらいたい」と話していた

▼寛氏は病苦に耐えながら、衆院議員に当選。日米開戦時の東条英機首相への批判の急先鋒(せんぽう)に立った。1942年の総選挙は大政翼賛会の推薦を受けず、特高警察の監視と選挙妨害の中で再選した

▼一方、安倍首相は憲法9条の解釈変更で集団的自衛権を認め、自衛隊の海外派遣を可能にする安全保障関連法を成立させた。平和主義に命をかけた祖父と真逆の政策を推し進めている

▼21日には「共謀罪」と同じ趣旨の「組織犯罪処罰法改正案」を閣議決定する予定だ。市民や労働団体の抗議行動が監視され、弾圧される危険性が高く、「平成の治安維持法」と批判される

▼米軍基地建設に抗議するリーダーを不当に長期勾留し、法の解釈を恣意(しい)的に変えてでも工事を強行する。戦前のような軍部ではなく、米軍に牛耳られた国家総動員体制を危惧する。(与那原良彦)