犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が閣議決定された。

 看板は変わっても、過去3度廃案になった共謀罪と本質的に変わりはない。内心の自由や表現の自由を脅かしかねず、強く反対する。

 政府は2020年の東京五輪に向けた「テロ対策」として法案の必要性を強調している。

 適用対象はテロ組織や暴力団など「組織的犯罪集団」で、2人以上で犯罪を計画し、うち1人でも資金の手配や関係場所の下見など「準備行為」をしたときに、計画に合意した全員が処罰される。

 対象となる犯罪を当初の半分以下の277に絞り込んだとはいえ、範囲は広い。

 話し合っただけで処罰されるというのは、犯罪実行後の「既遂」を原則としてきた日本の刑法体系を根本から覆す。思想及び良心の自由を保障した憲法にも反する。

 とりわけ世論の批判が強いのは、市民がその対象となり、監視社会への道を開く恐れである。

 政府は「一般市民が対象となることはない」と繰り返し説明する。しかし組織的犯罪集団の概念はあいまいで、「正当な活動をする団体でも目的が一変すれば処罰の対象となる」との見解を示している。一変したかどうかを見極める捜査機関の恣意(しい)的な運用への懸念が消えない。

 戦時中に戻るような嫌な空気が漂うのは、国家が国民の心の中に踏み込む「監視の網」が広がろうとしているからだ。

■    ■

 改正案が反基地運動を展開する市民をターゲットにしているのではとの批判の声も根強い。

 米軍基地周辺での抗議行動が刑事特別法の「軍用物などの損壊」の下見と見なされたり、座り込みなどの呼び掛けが組織的威力業務妨害罪の「共謀」とされる可能性の指摘だ。

 法律の拡大解釈や過剰な取り締まりは、市民運動を萎縮させる。

 反基地運動のリーダーが微罪にもかかわらず約5カ月にもわたって勾留されたことと背景が似ている。自分たちにとって不都合な声を封じ、排除しようとするのが安倍政権のやり方なのか。

 名護市辺野古の新基地建設を巡って、これから埋め立て工事が本格化すれば、政治的表現の自由への規制が一層懸念される。

■    ■

 政府は共謀罪ではなく「テロ等準備罪」との罪名を持ち出しテロ対策を前面に掲げるが、当初与党に示した案には「テロ」の表記がなかった。

 もちろんテロを未然に防ぐことは重要である。だがすでに一定の重大な犯罪には共謀罪、予備罪などが整えられている。政府が法改正の根拠とする国際組織犯罪防止条約も現行法のままで締結できる。

 特定秘密保護法の制定と通信傍受の拡大を柱とした改正刑事訴訟法の成立、今回の共謀罪は密接に関係している。

 民主主義社会の根幹である基本的人権を軽視し、市民生活に深刻な影響を及ぼす法律をつくる必要はない。