〈天知る地知る我知る人知る〉。中学2年の時の担任教諭が口癖のように語っていた中国の故事である。40年近い歳月がたつが今も脳裏にこびりついている

▼だれも知るまいと思っても、悪事や隠し事はいつかは必ず発覚する。周りをだませても、天や地の神様は知っている。ましてや自分をごまかすことはできない。正直に生きろ、という思いを込めたのだろう

▼何が本当で何がうそなのか。登場人物の口から語られる言葉を聞きながら、先の故事を思い出す。大阪府豊中市の国有地売却をめぐる不透明な取り引きがあった森友学園問題である。真相究明のため、理事長がきょう証人喚問される

▼異例の契約に至った経緯や大幅な値引きの根拠、政治家の関与があったのかどうか。連日、ワイドショーまでにぎわす問題だけに関心も高い。多くの疑問に率直に語ってもらうしかない

▼一連の動きで気になるのは、私人の理事長への対応に比べ、もう一方の当事者である財務省や国土交通省、大阪府などの役人らに対する政党の追及がまだ甘いことである。理事長をスケープゴートにして問題の幕引きを図るのであれば、国民の政治不信は回復不能になるだろう

▼今は身をかがめて嵐が通り過ぎるのをじっと待っている御仁(ごじん)がいるかもしれぬ。余計なお世話ながら、冒頭の恩師の言葉を贈る。(稲嶺幸弘)