沖縄出身のバイリンガル経済学者が、島嶼(とうしょ)学と沖縄学にとことんこだわり続けた成果が凝縮された好書である。

岩波書店・3024円

 関わった島嶼の大学や組織・学会もグローバルだ。教育・研究・経営に関わった大学は沖縄以外でもハワイ、グアム、地中海マルタ、フィリピン、スリランカ、台湾、澎湖島、金門島、済州島等に及ぶ。足場を島に置き続けることで抽象的な島嶼論を越えている。

 理論と展開の柱は、小国・広域島嶼の経済学であり、的確な統計数値も駆使しながら農業・環境・観光・国際・政治・金融・交易・交通と多岐に応用する。氏の別種のキャリアであるアジア開発銀行や沖縄振興開発金融公庫等での実学も大きく寄与している。

 本書は、島嶼学にとって起点である島嶼学原論部分から始まる。日本島嶼学会(3代目会長)や国際島嶼学会(創設理事)、関連諸国際機関で培った認識を整理する。島に関する基本認識、島らしい地域社会的・地理学的特質、島嶼国の多様性と特徴などが、学会でどのように蓄積され、国際機関でどのように取り扱われているかについて、文献的整理を丁寧に行っている。

 沖縄学に関してはチャンプルー文化やウチナーンチュの国際的広がり、技術的優位性と亜熱帯的特質などを、経済論・発展論・地域振興論として具体的に盛り込んだ。亜熱帯地域である特産物やサンゴ礁基盤を生かした経済振興策についても分析し、ハワイと並んで亜熱帯農業を含む先端技術と環境資本の優位性発揮をメリットとして紹介し、その未来や可能性を論じている。

 また情報や沖縄県人移民等の人材ネットワークが、隔絶性・遠隔地性の制約を克服するとして展開している。国境域の沖縄はアジア近接圏との交易・観光・交流上で優位性があるとの信念が著者にはある。水などの受け入れの資源制約を組み入れた観光経済学も著述。多年にわたる自立経済研究を基にした最終章では、立ち上がるべき未来論を提起する。沖縄・島嶼・経済学徒への強烈なるメッセージであり、テキストであり、待望の書でもある。(長嶋俊介・日本島嶼学会前会長)

かかず・ひろし 1942年本部町生まれ。国際大学アジア発展研究所所長、沖縄振興開発金融公庫副理事長など歴任。台湾澎湖県アドバイザー、NPO法人アジア近代化研究所副代表、琉球大学名誉教授。「島しょ経済論」など著書多数。