菅義偉官房長官は27日、米軍普天間飛行場の辺野古移設を阻止するため翁長雄志知事が知事権限を乱用すれば、翁長氏に対し損害賠償を求めることもあり得る、との認識を示した。

 25日に辺野古で開かれた県民集会で、翁長知事は、前知事の埋め立て承認を撤回する、と明言した。菅氏の発言は、政府として対抗措置を示唆することで翁長氏の動きを強くけん制したものである。

 前知事の埋め立て承認を取り消した翁長知事は、最高裁判決を受け、承認「取り消し」を取り消した。埋め立て承認を「撤回」することができるのは、承認後に、事業者の重大な違反があった場合などに限られるとされている。

 3月末に期限が切れる「岩礁破砕許可」について政府は「地元漁協が漁業権を放棄したため更新の必要はない」と判断、再申請はしない方針だが、県は「従来の法解釈を一方的に変更した」と強く反発。許可を得ずに工事を続けるのは「重大な違反」に当たる、とみている。

 翁長知事が埋め立て承認を撤回した場合、国は「執行停止の申し立て」「代執行手続き」などで対抗する考えだ。こうした対応とは別に、損害賠償請求を検討することを明らかにしたのが今回の発言である。

 合意形成の努力を途中で放棄し、「報復」までちらつかせるのは、もはや負担軽減とは言えない。法治国家の名を借りた「脅し」に基づく新基地建設は、政府と県の関係を著しくゆがめ、問題の解決を遠ざけ、取り返しのつかない事態を生むおそれがある。

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 菅氏はしばしば、最高裁判決を念頭に、「わが国は法治国家だ」と主張する。ここで問われなければならないのは「どのような法治国家なのか」という実質面である。

 日本は建前上は戦前も法治国家だった。議会で制定された法律に基づいて国家権力が行使されたからだ。だが、実際にはその法律や政府の法解釈の変更、拡大解釈によって国民の人権はしばしば侵害され、無謀な戦争を防ぐこともできなかった。

 その反省にたって戦後、憲法の中に地方自治の章が設けられ、1999年の地方自治法改正で国と県は対等な関係になった。

 国地方係争処理委員会は2016年6月、辺野古をめぐる現状について「国と地方のあるべき関係からかい離している」と指摘し、「双方がそれぞれ納得できる結果を導き出す努力」を求めた。その精神を生かすことが解決への近道である。

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 政府は、前知事の埋め立て承認を唯一の法的よりどころとして基地建設を進める。

 だが、選挙公約や慰霊の日の平和宣言など公的に表明してきたことと反する突然の「埋め立て承認」は、名護市長選、知事選、衆院選、参院選などによって政治的正当性を否定された。

 戦後ずっと基地の重圧に苦しめられてきた沖縄に対して、新基地建設のために国家賠償法の発動までちらつかせるのは、「1強体制」のおごりというほかない。