〈きみが手をのばせば/しあわせにとどきますように/星空へのぼるはしごを見つけますように…〉。わが子の誕生を喜び、父親が作った作品だという

▼父の名はノーベル文学賞を受賞した音楽家のボブ・ディランさん。40年以上も前の名曲「フォーエバーヤング」を題材にした絵本「はじまりの日」(岩崎書店)で歌詞の意味を知り、思わず引き込まれてしまった

▼生活や家庭のにおいがしない永遠の「異端児」と称される人も、実は子煩悩だった。そのギャップが新鮮で、親心とは普遍的なものなんだと思った

▼そんな親心が揺れ動く季節である。手を焼いたわが子も成長すれば、やがて親元を離れていく。今の時期、空港や港では進学や就職で古里を離れる親子の「別れの光景」があちこちで見られる

▼つないだ手を離すと、親はわが子が自分の手で幸せをつかむことを願うだけ。星空へのぼるはしごも自力で見つけることを祈ることしかできない。冒頭の一節からは、いずれやってくる「別れの日」を覚悟した切ない親心もにじむ

▼3月が「別れの月」なら、4月は「はじまりの日」の月である。〈毎日がきみのはじまりの日/きょうもあしたもあたらしいきみのはじまりの日〉。「異端児」が紡いだ言葉はそのまま、親から新生活のスタートを切るわが子に贈るエールである。(稲嶺幸弘)