バッグが1050円だと思って買ったら送料込みで1750円。「詐欺やろ~」と、ネット上でつぶやいた人がいた。それに通販サイトの社長が激怒、「ただで商品が届くと思うんじゃねぇよ」と返した。5年前にあった「事件」

▼乱暴な言葉遣いが批判されたが、核心を突いていたのではないか。確かに、私たちは送料無料を当たり前だと思っている。送料が高い沖縄では特に大事なポイントだ

▼送料が無料なら近くの店で買うより安くなる。重い商品も運ばなくていい。だから通販は拡大を続けてきた

▼快適な買い物を支えてきた宅配最大手ヤマト運輸が突然、音を上げた。時間指定、当日配達、とニーズに応えてきたが、「もう無理です」というのだ。サービスの簡素化と値上げに着手する

▼41年前、宅急便を始めた初日の荷物は11個。それが年間17億個にまで増えた。需要とビジネスモデルがあっても、現場を担う人がいない。ヤマトのSOSは後年、日本経済の曲がり角の象徴として語られるかもしれない

▼もっと速く、もっと便利に。私たちの際限のない欲望も、現場を疲弊させてきた。その結果、送料は無料でなくなるかもしれないし、何より敬意を欠いていた。本当に通販がいいのか。まとめて注文できないか。クリックする前に、せめて通販の現場を想像することにする。(阿部岳)