「忖度(そんたく)」とは他人の心をおしはかること。相手への思いやりを示す行為の一つだが、相手が権力者となると事情は異なる。忖度はおもねる姿勢につながり、権力暴走の歯止めを失わせる。

 近ごろ政治の場で忖度が注目を浴びている。森友学園を巡る国有地の大幅値下げ問題は、安倍晋三首相夫人への忖度が働いたと言われる。異論が多いなか断行された道徳の教科化は、愛国心を強調する安倍政権への文科省の忖度が疑われている。

 南スーダンに派遣されている陸自部隊の日報について、稲田朋美防衛相が「戦闘」を「衝突」と言い換えた問題で、防衛省が日報を「破棄した」と嘘(うそ)をついたことは記憶に新しい。防衛相は関与を否定しており、それが事実ならば同省の嘘も忖度の結果であろう。政治の忖度は、国民への背信に直結している。

 忖度はかつて新聞にも蔓延(まんえん)していた。

 太平洋戦争時に新聞記者として国威発揚に加担した反省から、戦後は反戦を訴え続けたジャーナリストの故むのたけじさんは、戦前戦時の新聞社は自己規制に陥っていたと明かした。

 負け戦を「勝った」と報じ続けた嘘は、時の政府に直接強要されたものではなかったという。「憲兵らが新聞社に来て取り締まったことはない。自分たちで縛っていた。(権力と)戦わずして負けていた」との言葉が重く響く。

 春の新聞週間が6日から始まった。権力への忖度があふれる今だからこそ、権力をチェックする報道や論説の重要性が増している。

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 新聞報道を取り巻く社会の情勢は、前途洋々とは言えない。報道への信頼性はいまだ高いものの、新聞離れが言われて久しい。国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表する報道自由度ランキングで、日本は2010年11位だったのが、16年には72位に大きく下がった。

 社会にはインターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)経由の真偽が定かでない情報があふれ、新聞をはじめとする既存メディアの報道を脅かす勢いだ。

 一方、報道の役割を再認識させる出来事が県内でもあった。軍隊と性暴力の関係について宮古島市議が自身のフェイスブック(FB)で投稿したことを巡り、市議会の与党会派が同市議の一般質問をボイコットし、議会が2日間空転した問題だ。FB投稿がネット上で激しい批判を浴びたことに乗じ、野党の立場をとる同市議の発言権を封じようとする行為だった。

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 これに対し本紙は、地方自治に詳しい専門家が与党会派のふるまいを疑問視する記事を掲載。新聞読者が意見を投稿するオピニオンコーナーにも、冷静な対応を求める意見が相次いで寄せられた。その後、市議会は急速に正常化した。

 問題がどこにあるかを分析し、公平で公正な視点で伝えること。国内外を問わず、社会を分断させるような動きが強まっている今こそ、新聞の役割の大きさを自覚したい。