「民意をうち固め」れば、国は「既成事実積み上げ」を止めるのでしょうか。
 新垣さんは、「事前協議」を一方的に終了したとし、美謝川水路変更への名護市長の反対により必要とされる埋立設計概要変更は県知事の許可が必要だから、美謝川水路変更以外の工事を先行させて「既成事実を積み上げる」国の政策に、「固い民意を絶えず打ち固める運動」で対抗しようと言います。県民投票で「民意」を示せば国がこれらの「既成事実の積み上げ」をやめる、つまり工事をやめるのでしょうか。そのような国だったら今までの民意の積み上げでとっくに工事をやめているのではないでしょうか。

辺野古沖で抗議のカヌーを拘束する海上保安官=3月29日午前、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沖

■民意背負う知事

 逆に、県民投票を何カ月もかけて行ったらその間に国は「既成事実」をどんどん積み上げていくでしょう。どんなに強い民意を示しても、残念ながら法的に国を縛ることはできません。だから国は合法的に好き放題やってきているのです。しかし、民意を背負った翁長雄志知事が法的に国を縛ることは「撤回」によって可能なのです。翁長知事の「撤回」回避に疑問を呈さず、わざわざ逃げ道を用意するのは、翁長県政および「オール沖縄」を延命させることには効果があるかもしれませんが、基地阻止とは逆方向を向いていると思います。
 新聞にも、行政指導、差し止め訴訟、県民投票、出直し選挙などを列挙して「撤回」をなるべく引き延ばすような論調が多いように思えます。しかし、行政法の武田真一郎氏は、県民投票を同じく推しながらも「辺野古埋め立てを法的に止める手段としては、おそらく埋め立て承認の撤回以外はあり得ない」とし、「県が差し止め訴訟などを起こしても、勝訴することはきわめて難しい」としています(本紙4月1日)。
 同じく行政法専門で先述の「撤回問題法的検討会」のメンバーであった仲地博氏は、県による工事中止を求める行政指導には「法的拘束力がなく国が従う見込みは全くない」としています(本紙3月17日)。今やることは、工事を止められない方策を連発して工事の進行を許すよりも、知事が「撤回」と、先述のように執行停止をさせないための手続きを同時に行って工事を止めることなのではないでしょうか。その上で県民が行う民意の表明も生きてくるものと思います。

■辺野古の現場で

 さらに「民意」について言えば、国に対する民意と同じぐらい、県民が県知事に対して示す民意も重要です。知事が3月25日に「撤回」の予定を明らかにしたのは、多くの県民からの要求に応えてのことです。新垣さんは、県民投票が「躊躇(ちゅうちょ)する県当局の背中を押し知事に『撤回』決断を迫る政治的状況を生み出す基盤」となると言っていますが、県民投票などなくとも、知事は県民からの重圧を背に「撤回」することを約束しました。
 また、新垣さんは「県民の中に『知事頼み』状況が強まっている」と言っており、武田真一郎氏も「知事に頼るだけでなく、行動で」と言っていますが(本紙4月1日)、ここで、この20年余の辺野古の闘いを現場で頑張ってきているAさんによる新垣さんの論考に対する感想を、許可を得て紹介します。
 「『県民投票』など、知事誕生から2年半もたって、工事も進んでいる中、どうして今頃になって私たちに振るのでしょうか。96年の県民投票は総力を尽くして頑張りました。97年の名護の住民投票のときは『これが最後』と思っていました。県民投票が『裁判官の心を動かす』?呆れてしまいます。私はタンクを背負って海にも潜ってきました。現場は悲鳴を上げたい気持ちです。今ですら毎日闘っている市民に、『運動主体側の課題』としてふたたび県民投票の莫大(ばくだい)な労力を担えというのですか。『県民一人一人の決断』として『その可能性にかけたい』と言いますが、『やるのはあんたたちだよ』と言われている気がします。高みの見物をしている。今工事を止めるのは知事権限、『埋立承認撤回』です」

■感情受け止めて

 多くの県民が、知事就任以来2年半、いやそのずっと前から、現場で、数々の集会で、街頭で、辺野古基地阻止のため、運動し続けてきました。知事が反対をしなかった高江のオスプレイパッド建設、山城博治氏ら不当勾留、離島の戦争準備等にも多くの県民が身を粉にして抵抗し続けてきています。その上で、県民がやりたくてもできない、知事にしかできない「撤回」を求めているのです。それを「知事頼み」と呼ぶのでしょうか。これだけ主体的な運動をしてきている県民に対して、「主体的な県民運動を再構築」せよというのでしょうか。県民から見たら上から目線に見え、納得できないのではないでしょうか。
 新垣さんは、私の「いら立ちと焦り」を指摘されますが、大浦湾が刻一刻と破壊されるにつけ、Aさんら現場を含め多くの県民が持っている感情です。命を守る運動において悲喜こもごもさまざまな感情が出てくるのは当然です。新垣さんのような知事のブレーンの役割を担える方こそ、このような感情を受け止め、県民に「決意せよ」というよりも、知事に対して「撤回」と執行停止を防ぐ手続きで、一刻も早く工事を止めるように働きかける原動力としてください。(『アジア太平洋ジャーナル ジャパンフォーカス』編集者)

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