最大震度7を2回観測し、熊本県を中心に大きな被害をもたらした熊本地震。震度7の揺れが最初に襲った14日の前震から、1年を迎えた。  崩れた建物の下敷きになるなどして50人が亡くなり、地震後の避難生活のストレスから体調を崩したなどの「震災関連死」を合わせると225人が犠牲になった。災害大国に暮らす国民にとって、忘れてはならない災禍の歴史の一つとして、心に深く刻み込まなければならない。

 4月16日の本震で全壊した南阿蘇村の救急指定病院が診察を一部だが再開したり、震度7に2度見舞われた益城町では他市町の協力を得て、停止していた学校給食が始まったりと、住民や自治体は復旧に向け歩みを進めている。

 しかし、倒壊したままの建物やがれき、防水のブルーシートが屋根を覆った住宅が多く残り、生活再建も道半ばというのが現実であろう。

 家を失った人のために建てたプレハブの仮設住宅や、自治体が賃貸住宅を借り上げた「みなし仮設」では依然、4万人以上の人が生活している。新しく家を建てるにも、地震があった地盤に再び建築して大丈夫か、再建にかかるローンは組めるだろうか-。被災者の悩み、将来への不安は尽きない。

 暮らしの再興に向けた相談ニーズは人それぞれである。早期の復興のためにも、国を含め行政は、弁護士や銀行、不動産業者などとも連携できる仕組みを整え、被災者の実情に沿った細やかな支援を継続することを求めたい。

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 熊本地震は、震災関連死が直接死の3倍強あり、関連死の割合が高いのが特徴だ。自宅の被災などから「車中泊」をして亡くなった人が41人認定され、病院の被災で転院後に亡くなった人も26人と多かった。精神疾患を発症し自殺した人も4人いた。

 環境の急変に遭い、精神的、肉体的にも弱ったり、必要な医療を受けられなくなったりしたケースが多くあった。

 余震が続いたため、屋内より車内が安全と考え、車の中で過ごす人が広範囲にいた。だが、行政も車中泊の実情把握とケアが十分でなかったとの指摘も出た。医療機関は建物の耐震強化、住民側には車中泊での危険性の啓発など、今回の教訓で踏まえなければならないことは数多い。

 熊本地震を引き起こした活断層は県内にも89カ所確認されている。余震が続くような地震が沖縄でも起これば、車中泊や、医療機関の業務継続の問題は生じ得る。事前の備えを進めておく必要がある。

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 熊本で地震発生後、支援物資や行政の職員らが全国から送り込まれた。ただ、大量の支援物資を避難所に届けるノウハウがなくて物資が滞留したほか、受け入れた国・地方の職員の役割分担が明確でなく、当初は混乱もあった。

 災害直後から専門の物流業者を活用できる仕組みや、応援職員にどんな仕事をしてもらうかなど、「受援」の計画を策定しておかなければならないだろう。

 教訓を生かす着実な取り組みは、「風化」を防ぎ、被災地へ寄り添う形の一つである。