沖縄の風俗業界で働く女性たちの調査をしていると、彼女たちが暴力の被害者であることがよくわかる。彼女たちは基地のそばに住んでいる男たちからの暴力を受けて育ち、子どもを生んで、あっという間に大人になる。

「沖縄02 アメリカの夜」

 街を分断する基地のフェンスは、米軍を守るものであって、暴力から逃れようとする彼女たちが逃げ込める場所ではない。だから彼女たちはフェンスのそばを、たったひとり裸足(はだし)で逃げる。

 岡本さんが撮る、オレンジ色の基地の光が照らすフェンスで分断された無人の街は、暴力を受けたその場から、何も持たずに逃げ出した彼女たちがみた街である。無機質で冷たい。どこからも助けはやってこない。

 だがそれは、今の沖縄の景色につきるものではないだろう。私たちの母や祖母といった、沖縄で暮らす女性たちのみた街もまた、同じような景色だったのだろう。

 岡本さんは、1950年代から60年代に大量に造られた基地内外の「外人住宅」とともに、基地返還後、リトル・アメリカと銘打つ北谷町の夜の姿を同時に記録する。また別の写真集『沖縄01 外人住宅』は、沖縄の土地で、星条旗と日の丸がともに風にたなびく姿を記録する。それらは軍隊という暴力装置とともに生かされ、それゆえに暴力を内包せざるをえない沖縄の歴史を刻印した記録である。

 岡本さんの撮る強い光に満ちた沖縄の写真は、一見すると単にアメリカンナイズされ異国情緒あふれた街の記録のようにみえるだろう。だが沖縄の夜の暗さを知るものには、幾重にも堆積した暴力の記憶と、新たな暴力の予兆に満ちた街の記録にみえるだろう。

 沖縄の地にこれ以上、フェンスで区切られた場所を造るわけにはいかないとぎりぎりの闘いを続ける辺野古に、高江に思いを馳(は)せて手にとられるとき本書は真の力を持つ。贅沢(ぜいたく)で華美な装丁を拒否し、移動する身体に合わせて創られた書だ。これは、闘いの現場に伴走する書でもある。(上間陽子・琉球大学教授)

◇写真集「沖縄02 アメリカの夜」ライフ・ゴーズ・オン・2160円

【プロフィール】おかもと・なおぶみ 1962年東京都出身。83年和光大卒。85年東京綜合写真専門学校卒。78年以来東京と沖縄を往復。2008年『沖縄01 外人住宅』発行