1995年に刊行した『陳侃(ちんかん) 使琉球録』を皮切りに冊封琉球使録集成の出版に乗り出したわけだが、冊封使録の全体像を俯瞰(ふかん)するようなテキストがなく、編集作業の上でも、販売の上でも不便を囲っていた。

榕樹書林・6264円

 そんななかで、原田禹雄先生から京都大学の科研報告書『使琉球録解題及び研究』が送られてきた。冊封使録研究のハンドブックとして大変よくできており、まさに私どもの出版の援護であるかのようであった。原田先生のお薦めもあり、編者である京都大学の夫馬(ふま)進先生と連絡をとり、市販版の製作を希望した。

 夫馬先生は私どもの申し出を積極的に受け入れて下さり、改訂増補に加え、関連する貴重な古地図(『(★)江口図』・『福省南台市街図』『福建省会城市全図』)をグラビアとして付加するよう手配して下さったのである。

 本書は夫馬先生を代表に、京都大学の東洋史学出身の第一線の研究者6人に加え、真栄平房昭氏(現琉球大学教授)が参加し、各冊封使録の書誌学的解題、著者の略歴、内容解説、さらにはその使録の全体のなかでの位置、東アジアの他の冊封使録との比較研究、日本国内での所蔵状況に至るまで詳述されている。

 冊封使録に関する基本情報を一冊に詰め込んだ本書は、これから研究しようとする人にとっては、この上ない案内書であり、私としては冊封使録集成の事実上の「別巻」と位置づけての出版となった。

 なお、夫馬先生は今日に至るも冊封体制の研究において刺激的発言を続けておられる。昨年はその研究で『朝鮮燕行使と朝鮮通信使』(名古屋大学出版会)が、東アジア出版文化賞の「パジュ・ブック・アワード」で著者賞を受賞され、当社もまた特別賞を受賞することができた。私も韓国パジュ市の表彰式に同席した夫馬先生と旧交を温めることができ、感無量であった。

(武石和実・榕樹書林代表)

(★)は「門」に「虫」

◇榕樹書林・6264円