犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は、6日の衆院本会議で審議入りし、金田勝年法相が14日、衆院法務委員会で趣旨説明した。19日から実質審議に入る。

 法整備は、国際組織犯罪防止条約の締結に欠かせない、と政府は主張する。

 共謀罪のマイナス・イメージを薄めるため、「共謀罪」の名称を「テロ等準備罪」に変え、適用対象を「団体」から「組織的犯罪集団」に改めた。

 犯罪を行う合意(計画)だけでなく、実行の準備行為も要件に加えた。

 安倍晋三首相は「共謀罪と呼ぶのはまったくの誤り」だと指摘する。だが、実行行為を伴わなくても、仲間同士で共謀し計画・準備することが処罰可能になるという本質は、変わっていない。

 「組織的犯罪集団」とはどんな集団か、何が「準備行為」に該当するのか。いずれもあいまいだ。捜査機関が「準備行為」を広くとらえる懸念は払拭(ふっしょく)されていない。

 計画・準備段階の行為を犯罪として処罰するためには、日ごろから動静を監視・警戒しなければならない。それをどのような捜査方法で実行しようというのだろうか。プライバシー権や通信の秘密が侵害されるおそれがある。

 安倍首相は「法整備ができなければ(東京五輪・パラリンピックが)開催できないと言っても過言ではない」とまで言い放った。テロと五輪を持ち出して国民の不安をあおり、感情に訴える-。それこそ印象操作そのものだ。

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 国際組織犯罪防止条約を締結するのに、本当に共謀罪の趣旨を盛り込んだ新たな法律が必要なのか。それも疑問である。

 日本はすでに、爆弾テロ防止条約など13のテロ関連条約を締結し、国連が求めるテロ対策に対応してきた。

 殺人予備罪、放火予備罪、凶器準備集合罪など70を超える「予備罪」「準備罪」が法律で定められている。処罰の対象となる準備的行為の範囲は広い。現在でもさまざまな形で対策がとられているのである。

 「現行法のままでも条約は締結できる」との見方は野党だけでなく法律の専門家の中にも多い。

 国際組織犯罪防止条約は、「金銭的利益その他物質的利益」を目的とする組織的犯罪集団を対象にしたもので、マフィアを念頭に、国連で制定されたものだ。

 国連は、効果的な組織犯罪対策を求めてはいるが、共謀罪の立法を義務づけているわけではない。

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 安倍政権はこれまで、再三、国会の数の力で強引に法案を押し通してきた。

 「手荒い方法で採決しても、時がたてば国民は忘れ、支持率は回復する」-そんな驕慢(きょうまん)な発想があるのではないか。

 「安倍1強体制」の下で、日本の政治は、チェック・アンド・バランスの機能を完全に失ってしまっている。

 組織犯罪処罰法改正案の国会審議は、国会がチェック機能を回復することができるかどうかの試金石である。