亀甲墓は女性の体がモチーフだと言われる。死んだら再び母の中に戻る。しみじみと母体への敬意を感じさせる造形である。なぜ現代日本では女性器が絶対のタブーになってしまったのか

▼東京高裁がアーティストのろくでなし子さんに有罪判決を下した。自らの性器をスキャンしてデータを配ったのがわいせつに当たるという

▼女性器をかたどった「笑える」作品を発表していて、データは出資者へのお礼の気持ちだった。著書「私の体がワイセツ?!」の中で、「異常で特別な物とせず、人間にとって当たり前の物であり、当たり前だから大事にしようよ、と言いたい」と活動の動機を書いている

▼この「事件」に被害者はいない。誰も性的に搾取されていないし、無理に見せられた人もいない。そこに警察がわいせつという物差しを持ち込み、検察と裁判所が追認した

▼象徴的な逸話がある。個展に来たおじさんたちに説教されたという。女性器は「暗闇の中、布団をそっとめくって眺めるものなんだよ」。まさに権力と同じ独善の構図。女性の性を支配できないことが許せないらしい

▼ろくでなし子さんは「おまえらの物じゃない!」と怒り、その滑稽さを笑いのめす。最高裁まで続くこの裁判自体が、固定観念を揺さぶるアート活動になっている。表現の自由を巡る闘いの最前線でもある。(阿部岳)