米軍普天間飛行場返還を巡る名護市辺野古の新基地建設の賛否を最大の争点に激戦が展開された参院選沖縄選挙区は、辺野古反対の「オール沖縄」勢力が擁立した伊波洋一氏(64)が当選し、2014年の知事選から続く反辺野古の「民意の集大成」(翁長雄志知事)を安倍晋三政権に突き付けた。安倍政権・与党がアベノミクスの効果を強調し全国で支持を受ける一方、現職閣僚でもある島尻安伊子氏(51)が落選。衆参両院の県内選挙区選出の自民党議員がゼロになり、県内有権者が政権運営にノーの審判を下したとも言える。

当選確実を報じるテレビ速報に沸く伊波陣営=日午後8時すぎ、那覇市古島・教育福祉会館

 新基地問題は埋め立て承認を取り消した翁長知事と取り消しの是正を求める国との法廷闘争に発展。裁判所からの和解勧告を受け両者が協議を継続し、最終的には再び司法判断に委ねられる見通しだ。前知事の埋め立て承認以降は知事選、名護市長選、衆院選で「オール沖縄」勢力の候補者が当選し、今回の参院選でも同様の民意が示された。司法が世論の現状をどう受け止め判断するかが注目される。

 16年の沖縄は1月の宜野湾市長選、6月の県議選、7月の参院選が続く「選挙イヤー」。宜野湾市長選では自民が推した現職が再選したが、辺野古反対を明確に掲げる「オール沖縄」は県議選で48議席のうち過半数の27議席を獲得。その勢いを参院選につなぎ、伊波氏を当選へ導いた。

 翁長県政にとっては県議会の過半数、衆参両院の全ての選挙区選出議員が「オール沖縄」の枠組みで協力する態勢が構築され、新基地建設の阻止に向けて日米両政府と対峙(たいじ)する際の大きな後ろ盾となる。

 自民は現職閣僚で県連会長の島尻氏を落選させたことで、議席が伸び悩んだ県議選と同様に苦しい立場が続く。政権ナンバー2の菅義偉官房長官や党幹部、閣僚、大物議員を送り込んだ自民党本部にとっても大きな痛手となる。

 参院選での敗北は、公約破りを指摘された島尻氏個人の問題だけではなく、幾度も示される辺野古反対の民意に政府、与党が向き合うことが迫られている。(参院選取材班・銘苅一哲)

■勝因 無党派層 広く支持

 「基地のない平和な沖縄を」をスローガンに掲げ、「オール沖縄」勢力が擁立した伊波洋一氏が初当選した。主要な争点となった基地問題では名護市辺野古の新基地建設反対を強く訴え、宜野湾市長を2期7年半務めた実績や保育園定数の拡大など福祉政策をアピール、革新だけでなく無党派層にまで広く支持を集めたことが勝利につながった。

 基地問題が大きな争点となった県議選で、翁長雄志知事を支える与党県議が27議席に飛躍したことも追い風となった。

 伊波氏は県議選期間中から県政与党の候補者の集会などに積極的に参加し、マイクを握り、政策や考えを訴えた。県議選後には、与党系候補者が使用した事務所をそのまま地域支部の事務所に転換するなど、県議選と連動した「セット戦術」も功を奏した。総決起大会を開催せず、県内各地域で街頭演説会や個人演説会を開くことで、地域に根付いた運動を展開した。

 有権者の大半を占める無党派層対策は、女性支持者が先頭に立って、待機児童対策や子どもの貧困対策など、福祉施策に特化したビラなどで訴えた。

 選挙権年齢の引き下げで新有権者になった18、19歳を含む若者対策では、地元の宜野湾市の若者を中心に意見交換し、給付型奨学金の創設など若者の課題に軸を置いた政策を練り上げ、他陣営に先駆けてビラを配布した。

 ネット上でも福祉や教育政策を訴え、基地問題以外にも重きを置く姿勢を強調、有権者に広く浸透した。

 企業対策では、オール沖縄のかりゆしや金秀両グループや那覇市議会保守系会派新風会、翁長雄志後援会が企業対策班を設置。企業回りを徹底して行い、保守層を取り込んだ。(参院選取材班・大城志織)

■敗因 辺野古容認 公約転換響く

 3期目の選挙に挑んだ島尻安伊子氏は、子どもの貧困対策や沖縄振興予算の確保など閣僚としての実績を前面に打ち出したが、米軍普天間飛行場「県外移設」の公約を翻して辺野古容認に転じたことへの批判を払拭(ふっしょく)できず、新基地建設反対を訴える伊波洋一氏に敗れた。

 国政与党としての実行力を強調し、西普天間住宅地区の跡地利用など経済振興策の実現を訴え、100超の推薦と保守系首長らの支持を獲得。豊富な運動量で集票を図ったが、自民県連に先駆けて県外移設の公約を転換したことや、辺野古の新基地建設を巡る市民の反対運動を「責任のない市民運動」とするなど物議を醸す発言が響き、保守中道の批判票が流れ、伸び悩んだ。

 自民・公明の支持を固める一方で、県経済団体会議、維新、そうぞうの3者で、普天間飛行場の5年以内の閉鎖などを盛り込んだ政策覚書に調印。選挙協力は不調に終わった。

 菅義偉官房長官や石破茂地方創生担当相ら大物閣僚が来県し、経済界や保守系首長らに支持を訴えたが、効果は限定的だった。

 元海兵隊の米軍属による暴行殺人事件や相次ぐ米軍関係者の事件・事故で県民の反基地感情が高まった。新基地建設の是非が最大の争点となった選挙で、子どもの貧困対策や暮らしの向上を重点的にアピールしたものの、基地問題の争点化を回避できなかった。

 ネットでの選挙運動も積極的に展開し、18歳以上の若者や無党派層への浸透も試みたが、追いつけなかった。(参院選取材班・新垣卓也)