〈きょうもあしたも/あなたはたくさんのドアをあけていく…〉。絵本作家のアリスン・マギーの絵本「たくさんのドア」はこんな書き出しで始まる

▼未来へのドアの向こうには、新しいこと、驚くこと、おもしろいこと、喜びが待っている。入学や進級など、門出を迎えたわが子の背中を優しく押す親の気持ちを綴(つづ)っている

▼子ども向けの作品だが、人生訓のような味わいもある。4月に社会人になったあなたにとって、実社会のドアの向こうはこれまでとは違うものだと痛感しているころかもしれない

▼緊張してドアの前で足が止まってる人、ドアを開けたものの早くもミスをして上司に叱られ落ち込んでる人もいるだろう。しばらくは成功よりも失敗、楽しいことよりつらく苦しいことが多いはずである

▼でも大丈夫。テキパキ仕事をこなす頼もしい隣の先輩も新人時代には、何度もドアの前で足が震えていたはずだし、強面(こわもて)のあの上司だって同じ時期には仕事に自信をなくし、出社するのが嫌になった経験があるにちがいない

▼会社人生の後半戦に身を置く立場で振り返れば、山あり谷ありなれど、どんなドアも開けてみて損はなかったと自信を持って言える。〈あなたはまだしらない/じぶんがどれほどつよいかを〉。ドアの前で悩めるあなたに、冒頭の作品の言葉を贈る。(稲嶺幸弘)