今村雅弘復興相が、東日本大震災の被災者を傷つける発言をした責任を取って辞任した。

 不適格な人物を大臣にした任命責任は安倍晋三首相にある。暴言の再発を食い止められなかった監督責任も問われよう。

 今村氏は25日、東京都内で開かれた派閥パーティーで、こう発言した。

 「社会資本などの毀損(きそん)もいろんな勘定の仕方があるが、25兆円という数字もある。これがまだ東北で、あっちの方だったから良かったけど、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大(ばくだい)な、甚大な被害があったと思っている」

 被災者の心情を逆なでするような冷たい言葉が、復興事業のトップに立つ大臣から出たことに驚き、あきれ、怒りがこみ上げてくる。

 1万8千人を超す死者・行方不明者を出し、今なお約12万人が避難生活を強いられていることを、知らないわけではあるまい。

 復興庁のホームページには「被災地に寄り添いながら」と、その役割が記されている。寄り添う姿勢からはほど遠い。

 今村氏は福島第1原発事故の自主避難者を巡る発言でも厳しい批判を浴びたばかりだ。

 自主避難といっても放射線への不安からやむにやまれぬという人がほとんどである。それなのに帰還するかどうかは「本人の責任」とし、不服なら「裁判でも何でもやればいい」と突き放した。

 辞任は遅きに失したくらいだ。

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 今村氏だけではない。 

 山本幸三地方創生担当相は外国人に対する文化財の説明を巡って「一番のがんは学芸員」と発言、波紋を広げた。

 自民党の古屋圭司選対委員長は、うるま市長選で社民、共産党などが推薦する新人候補の公約を「詐欺行為にも等しい沖縄特有のいつもの戦術」と批判、釈明に追われた。

 安倍政権の閣僚や自民党幹部による不適切発言は憂慮すべき事態だが、実は安倍氏自身それに近い対応を見せている。

 衆院厚生労働委員会で、民進党議員が世論調査の数字を引き合いに森友学園問題で首相夫人らの証人喚問を迫ると、「その調査によると内閣支持率は53%。自民、民進の支持率はご承知の通り」と返したのだ。

 支持率が高いから証人喚問は必要ないと居直るような態度である。

 高支持率だから失言も許されるとの空気が自民党内にあるのではないか。

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 今村氏の発言で見過ごせないのは、東京から東北を「あっちの方」とする目線だ。

 首都圏に電力を送るため国策として推進してきた原発の事故によって、東北の人々が苦しんでいるというのに、ずいぶん身勝手な言い方だ。

 「日本の安全保障のためには沖縄の負担はやむを得ない」という米軍基地の問題と通底するものがある。

 とんでもない暴言が映し出すのは、政治家の劣化と「安倍1強体制」のおごり、中央が地方を差別する構造である。