【松田良孝通信員】今年1月、クルーズ船で沖縄を訪れた台湾人が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されるなど、海を越えて関心が集まる薬物問題。台湾でも薬物のまん延は深刻で、中部の彰化県は保護者が同意すれば児童・生徒の尿検査ができる制度を、新たな学年度が始まる9月からスタートさせることになった。

若者の薬物汚染防止を呼び掛けた彰化県政府主催のイベント=13日、彰化市内(彰化県政府ホームページから)

 彰化県政府は「子どもたちを薬物から遠ざけ、保護者には子どもたちの生活に関心を持つよう呼び掛けるため」とするが、「検査を受けるのは子ども自身。子どもが人格を尊重されていないと感じかねない」と疑問も出ている。

 薬物汚染は、台湾でも若者の間に広がるなど社会問題化。台湾政府教育部(文科省に相当)は2009年10月、学校が児童・生徒の尿検査を行う指針を定めた。薬物違反歴や薬物を使ったとみられる児童・生徒のリストを学期ごとに作成し、行うとしている。尿検査の手引きで「尿検査は処罰や制裁ではなく、指導や救済である」として、慎重な実施を求めている。

 彰化県が実施するのは、保護者が子どもの薬物使用を懸念する場合に、同意書を添えて学校側に尿検査の実施を求めることができるというもの。検査対象は、学校側が作成したリストに基づいて実施する方法から大きく広がる。

 彰化県教育当局によると、魏明谷(ウエイミング)県知事は13日、若者の薬物汚染防止を目的とした彰化市内のイベントで「多種多様の薬物が若者を巻き込み、健康被害は深刻。薬物の乱用防止は緊急の課題だ」と説明した。

 これに対し、14日付の台湾紙「聯合報」は「教育や予防の観点から反対しないが、子どもたちが疑われていると思わないようにすることが重要」とする専門家の意見を紹介。彰化県PTA協会の代表者は「人権保護の観点から、陽性反応が出たとしても指導に配慮するべきだ」と求めた。

 「薬物を使っている生徒は学校には来ない。尿検査は、薬物乱用防止策としては限界がある」と懐疑的な意見もあった。