国会の機能低下が著しい。国会の威信がこれほど低下したことは、現憲法下ではなかったのではないか。

 8日の衆院予算委員会集中審議。森友学園問題などと並んで取り上げられたのは安倍晋三首相の改憲発言だった。

 3日の憲法記念日にあわせ、安倍首相(自民党総裁)は、改憲派集会に寄せたビデオメッセージで「2020年に新しい憲法を施行したい」と発言した。

 改憲時期について明言しただけでなく、憲法9条についても、1項、2項を維持した上で「自衛隊を明文で書き込む」という具体的な改正案に踏み込んだ。

 同じ日に読売新聞に掲載された首相インタビューにも同じ内容が盛り込まれており、狙い澄ました改憲発言であったことをうかがわせる。

 衆院予算委で民進党の長妻昭氏から発言の真意を問われた首相は「政党間の議論を活性化するためのものだ」と釈明した。

 12年に発表した自民党憲法改正草案との整合性を問われると、首相は「自民党総裁としての考え方は読売新聞に相当詳しく書いてある。ぜひそれを熟読していただきたい」と質問をかわした。

 鼻であしらうような答弁である。驚くべき傲慢(ごうまん)な態度だと言わなければならない。

 さすがに浜田靖一予算委員長も「不適切なので、気を付けていただきたい」と注意したが、改憲以前の問題として、与野党の別なく懸念する声が起こらなければ、日本の三権分立は危ない。

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 安倍首相は以前、「私は立法府の長であります」と発言したことがある。

 立法府の長であっても、憲法審査会の頭越しに改憲時期を明示することがあってはならない。ましてや安倍首相は行政府の長である。

 オリンピックと憲法改正は何の関係もないのに、在任中の業績を意識してか、首相は改憲時期とオリンピック開催とを関連づけ意欲を示した。

 踏み込みすぎの越権行為というしかない。

 安倍首相は、党総裁としての発言だと釈明するが、読売新聞1面トップの見出しには「首相インタビュー」とあった。国民向けの発言であることはあきらかであり、憲法擁護義務を負った首相である以上、この種の改憲発言には慎重であるべきだ。

 自民党の中からも石破茂前地方創生担当相らが首相発言への違和感を表明しているが、議論百出・百家争鳴のかつての自民党の闊達(かったつ)さは、かけらもない。

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 国会、内閣、裁判所の三権が互いにチェックし、抑制しあうことによって権力の乱用を防ぎ、国民の権利と自由を保障するというのが三権分立の原則である。だが、国会の存在感とチェック機能は希薄になるばかりだ。

 安倍首相が自分のことを「立法府の長」だと語ったのは、単なる言い間違いではなく、何でもできるという「全能感」の表れではないだろうか。野党の存在を議会制民主主義が健全に機能するための重要な要素だと考える謙虚さが必要だ。