大阪市の学校法人「森友学園」へ国有地を格安で払い下げた問題は、疑惑の解明が一向に進まない。安倍晋三首相の昭恵夫人へ交渉の進(しん)捗(ちょく)状況を適時報告していたとする籠池泰典前理事長の証言や、財務省幹部との交渉を示す音声記録など新事実が出てきたにもかかわらずである。

 民進党のヒアリングで、籠池氏は「(2015年に昭恵氏に)名誉校長になっていただいたことで、ある時期から土地についてスピーディーに動いたのではないかと思う」と財務省側が突然前向きになったと証言した。

 16年の音声記録では籠池氏が昭恵氏の名前を出すなどして財務省幹部が土地取引を「特例」と表現している。幹部は昭恵氏付の政府職員が15年に借地契約の期間を巡り照会した同じ人物である。音声記録が残る面会から3カ月後に破格の売買契約が成立。この間に何があったのか。

 籠池氏によると、14年3月に小学校建設について昭恵氏に伝えると、「『主人に伝えます。何かすることはありますか』と聞かれた」と証言している。財務省近畿財務局はその年の暮れ、国有地取得に必要な手続きを詳細に記した文書を学園側に手渡していた。タイムスケジュールを列挙し、ひな型まで示していた。

 一連の流れで昭恵氏の存在が影響を与えたのは間違いないだろう。衆院予算委員会の集中審議で安倍首相は「籠池氏の証言を信用して、一方的に発言している」と民進党議員に反論した。ならば、もう一方の当事者である昭恵氏らの国会招致がやはり必要だ。

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 疑惑の解明が進まないのは当時のやりとりを示す記録が残っていないからである。

 財務省は学園側との交渉記録を公文書管理法に基づく省内規則によって廃棄したという。森友学園との交渉や面会記録は歴史公文書に該当せず「事案の終了後」廃棄できると言っている。

 だが、森友学園との売買契約の支払いは完了していない。会計検査院は「事案が完全に終了したと認めることは難しい」と異なる見解だ。

 13年に学園が財務省近畿財務局に提出した国有地取得要望書の関係書類は、タイトルを含めほぼ黒塗りの状態で開示された。財務省にとって都合の悪い文書は廃棄され、開示された文書は黒塗りだらけ。情報公開の認識が著しく欠けると言わざるを得ない。

 音声記録に登場する幹部を当初は特定することさえ拒否していた。国有地の処分に関することである。国民への説明責任が不可欠である。

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 衆院予算委集中審議で、民進党議員から昭恵氏と学園側が「ずぶずぶの関係」と指摘されたことに対し、安倍首相は「品の悪い言葉は使わない方がいい。それが民進党の支持率に表れている」と答弁した。質問には答えず、関係のない支持率を持ち出す不遜な態度である。安倍首相からは疑惑を解明しようとする姿勢が少しも感じられない。

 共同通信社の世論調査で政府の説明責任を不十分と考える人が84・7%に上る。これで幕引きをしては国民の納得はとても得られないだろう。