【東京】戦前の沖縄の風物や民芸を撮影したフィルムの修復、デジタル化を進めているカナダ人の映像作家がいる。マーティ・グロスさん(68)。日本文化を紹介する映画の製作を続け、日本の陶芸にも詳しい。17日から沖縄を訪れ、陶芸家や専門家に映像を見てもらい、新たな解説を再録して作品化を進める考え。戦前の映像は貴重で、グロスさんは「日本や琉球の民芸の起源を物語る記録を残し、日本の重要な民芸運動の価値を国内外に広めたい」と、専門家らの支援を呼び掛けている。(東京報道部・宮城栄作)

戦前に撮影された映像「琉球の民藝」に収められている壺屋の陶芸(マーティ・グロスさん提供)

芭蕉布の糸づくりをする戦前の女性たち。「琉球の民藝」に収められている(マーティ・グロスさん提供)

戦前の沖縄の陶芸の映像を示し、映像の貴重さを語るマーティ・グロスさん=沖縄タイムス東京支社

戦前に撮影された映像「琉球の民藝」に収められている壺屋の陶芸(マーティ・グロスさん提供) 芭蕉布の糸づくりをする戦前の女性たち。「琉球の民藝」に収められている(マーティ・グロスさん提供) 戦前の沖縄の陶芸の映像を示し、映像の貴重さを語るマーティ・グロスさん=沖縄タイムス東京支社

 グロスさんは1970年からたびたび来日。70年代には福岡県の小石原焼、大分県の小鹿田焼の陶工のドキュメンタリー「POTTERS AT WORK(陶器を創る人々)」を製作。80年には人形浄瑠璃の映画「文楽 冥途の飛脚」を撮り、欧米で称賛された。

 中でも日常の工芸品に美を見いだす「民芸運動」に共感し、大正から昭和にかけて運動に取り組んだ思想家の柳宗悦、陶芸家のバーナード・リーチや濱田庄司らの活動を収めた貴重なフィルムを多く収集してきた。

 今回のプロジェクトは、劣化して上映できない10本以上のフィルムを修復し、工芸家や研究者らのコメントを加えて4枚のDVDにまとめ、民芸運動の映像コレクションを作る。

 その中に加える戦前の沖縄の映像は、39年に撮影された「琉球の民藝」(日本民芸館制作)で、壺屋の陶芸、芭蕉布や紅型作りなどが映されている。陶工が土をこね、ろくろを回して作陶したり、芭蕉布を織る姿が収められている。

 同時期に撮られた別の映像「琉球の風物」には、戦禍に遭う前の首里城や街の様子、糸満の漁業、にぎわう市場など風格や活気ある沖縄が映っている。各5~6分の映像で、23日までの来県中に専門家の解説を付け、作品を仕上げる予定。県内で保存されている古い映像の調査もしたいと話す。グロスさんは「完成すれば沖縄や日本の民芸の貴重な資料になる。一般向けにも研究にも生かしてほしい」と協力を求めた。問い合わせは、民藝運動フィルムアーカイブ制作委員会、電話090(9330)0035。