2017年(平成29年) 12月19日

社説

社説[復帰45年 基地・深まる溝]まっとうさを取り戻せ

 東京外国語大教授の山田文比古さんは、外務省に勤めていた1997年、県庁に出向し、県サミット推進事務局長として2000年の沖縄サミットに携わった。

 復帰40年に当たる2012年、山田さんは雑誌『世界』に一文を寄せた。

 「沖縄に対し、本土から向けられる視線は、かつてないほど冷淡である」「公には表出されないまでも、沖縄の基地問題はもういい加減(かげん)にしてほしいと、突き放した見方すら出始めているように感じられる」

 あれから5年。沖縄を取り巻く状況は厳しくなるばかりだ。

 オスプレイ配備撤回と米軍普天間飛行場の県内移設断念を求め、県内の全市町村長らが13年、東京行動を展開した。沿道から聞こえてきたのは「非国民」「売国奴」「中国のスパイ」「日本から出て行け」という耳を疑うような罵声だった。

 15年に自民党の若手国会議員が開いた勉強会では、沖縄の地元紙が政府に批判的であるとの議員の意見を受け、講師から「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」との発言が飛び出した。

 昨年10月には、東村高江のヘリパッド建設を巡り、本土から動員された機動隊員が、抗議する市民に「土人」と差別語を浴びせた。

 山田さんは、5年前と比べても「状況はもっとひどくなっている」と指摘する。

 「政府も世論も目を覚ますのではないかと思ったが、沖縄だけに負担を押し付ける構図は何も変わっていない。特に保守系の全国メディアは沖縄に対する抑制や遠慮がなくなった」

■    ■

 沖縄と本土の溝がここまで深まったことは、戦後、一度もなかった。

 沖縄の人々は沖縄戦で日本本土の「捨て石」にされ、戦後は米軍統治下で主権を失い、復帰後も米軍優先の基地政策に翻弄(ほんろう)されてきた。そして今、事実と異なる情報がネットで拡散され、読むに耐えない感情むき出しの言葉を投げつけられているのである。あまりに理不尽だ。

 本来であれば、安倍晋三首相は沖縄がたどった苦難の歴史を国民に訴え、沖縄への理解を積極的に求めるべきである。しかし、安倍首相の姿勢には、沖縄と本土の溝を埋めることをしないばかりか、逆に分断の構図を政治的に利用して辺野古新基地建設を進めようとしているのが感じられる。政治の堕落というしかない。

■    ■

 沖縄の米軍基地は、嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区の2施設だけでも、県外の主要な6基地である横田、厚木、三沢、横須賀、佐世保、岩国を合わせた面積を超える。目がくらむような基地負担の非対称性である。その上に辺野古新基地建設である。

 復帰45年を問う沖縄タイムス社・朝日新聞社などの県民意識調査で基地が集中する現状を「差別」と思う人が54%を占めた。

 県民同士を争わせ、沖縄と本土の溝を極端にまで深めるような基地政策が許されていいわけがない。

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