犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が衆院法務委員会で与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。野党が激しく抗議する中、与党側が採決を強行した。

 審議は尽くされておらず、数の横暴に強く抗議する。

 与党側は23日の衆院本会議でも採決を強行する構えだ。

 担当の金田勝年法相がまともに答弁できない法案である。「既遂」を原則とする日本の刑事法体系の大転換となる。憲法で保障された思想、信条の自由を侵害する恐れが強い。自首すれば刑を減免する規定もあり、密告を促す息苦しい監視社会を生み出しかねない。

 法務委で、最後の質疑に立った維新の議員が「これ以上もういいでしょう」と委員長に採決を求めると、与党議員からは賛同の拍手、野党議員からは罵声が飛び交い、議場は騒然となった。

 民進党の議員らが採決を阻止しようと委員長席を取り囲んで猛抗議。委員長の声がかき消されて聞こえない中で、採決が行われた。

 国会周辺では市民ら約1500人(主催者発表)が反対集会を開き、「共謀罪は今すぐ廃案」などとシュプレヒコールを上げた。採決が強行されると、「徹底弾劾」と叫び、抗議の声を繰り返した。

 市民らが反対するのは捜査機関の恣意(しい)的な運用や一般の市民が捜査対象になるのではないかとの懸念が払(ふっ)拭(しょく)されないからだ。

 政府、与党側は審議時間の目安とする30時間に達したから採決したとの言い分だが、時間の問題ではない。

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 「共謀罪」法案には多くの疑問や懸念がある。

 安倍晋三首相は、テロ防止のためと強調し、国際組織犯罪防止条約を締結できなければ2020年の東京五輪・パラリンピックが開けないと言う。しかし条約の目的はテロ対策ではないし、「共謀罪」は条約締結の条件でもない。

 テロなど重大犯罪には準備段階で処罰できる予備罪がすでにある。テロ対策に便乗しているというほかない。

 政府は一般市民が捜査対象になることを否定するが、米軍基地や原発に抗議する市民らに適用されかねない。

 277に上る犯罪について計画した疑いがあると捜査機関が判断すれば捜査することができる。しかも判断するのは捜査機関である。事実上、歯止めをかけることができず、乱用されることは目に見えている。不安は解消されるどころか膨らむばかりである。審議は生煮えのままで、拙速な採決であることは明らかだ。

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 安倍政権下で国会審議をないがしろにする採決の強行が続く。13年の特定秘密保護法、15年の安全保障関連法、そして「共謀罪」法案である。

 国会審議をないがしろにする姿勢は安倍首相の答弁にも表れている。質問に正面から答えることをせず、論点をすりかえてはぐらかす。

 民主主義の原点は議論と説明を尽くし、少数意見を尊重することにある。熟議から程遠い採決強行は三権分立を機能不全に陥らせ、民主主義を危うくする。