学校法人加計(かけ)学園が国家戦略特区制度を活用し計画している獣医学部を巡り、「森友学園問題」とも重なる疑惑が浮上している。

 指摘されているのは、獣医学部新設や事業者選定で何らかの力が働いたのではと思わせる不可解な動きだ。安倍晋三首相の長年の友人が学園理事長を務め、首相夫人が学園運営の保育施設の名誉園長に就任している点も森友と類似しており、疑念が広がる。

 加計学園は岡山市を拠点とする一大教育グループで、運営する岡山理科大学の獣医学部開設を愛媛県今治市で進めている。

 獣医学部の新設は実に52年ぶり。当初、文部科学省は新設に消極的で、政府内にも「獣医師数は不足していない」との慎重論があった。

 しかし昨年11月、政府は地域限定で規制を緩和する特区での新設を認めることを表明。今年1月の事業者公募で応募したのは加計学園だけ。今治市は学部新設に際し土地の無償譲渡を決めている。

 規制緩和のメニューは首相や有識者らで構成する国家戦略特区諮問会議で話し合われる。「加計ありき」でとんとん拍子で話が進んだとしたなら問題である。

 獣医学部新設に関し、文科省と特区を担当する内閣府のやりとりとを記録した文書の存在も指摘されている。内閣府から文科省に「総理の意向だ」など圧力をかける発言があったとされる文書だ。

 「国家の私物化」が疑われているのである。疑惑を晴らさなければ国民の政治不信は強まる。

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 文科省と内閣府の文書について、松野博一文科相は「文書の存在は確認できなかった」とする調査結果を発表した。

 だが聞き取りは高等教育局長など数人で、調査対象は担当部局で共有するフォルダなどに限られる。一部文書に登場する関係者が「ほぼ事実」と証言する中、早く幕引きを図りたいとの意図が透ける。

 文書に関しては、菅義偉官房長官も「こんな意味不明のものに、いちいち政府が答えることはない」とにべもなかった。有無を言わせない対応である。

 森友学園への国有地払い下げを巡る審議で、財務省担当者が学園側に「特例」と発言した音声記録の存在が明らかになった時も、財務省幹部が真偽確認の必要はないとの見解を示す場面があった。 

 国民への説明責任を棚上げし、事実関係の解明に背を向ける振る舞いが目に余る。

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 森友問題で事実関係をただす議員に対し、安倍氏が疑惑の挙証責任は野党にあるというような答弁をしたが、逆ではないか。

 今、問われているのは国民や国会に対する説明責任である。

 首相が言う通り自身や夫人の関与は一切なく、官僚の忖度(そんたく)も働いていないというのなら、自ら省庁に指示を出すべきだ。

 「俺のことは気にするな、すべての情報を開示し、徹底的に調査しろ」

 挙証責任を負っているのは政府の方である。