【ウトゥ・カカジ通信員】「遠くにいる子を呼び寄せたい親の願いや、親の近くに住みたい子の望みを可能な限りかなえてあげたいとするのは極自然な義理人情だと思う。市民の命と自由を守る任務を担った元兵士の親と、駐留地(国)で生まれた子が家族としてつながりたいと望むのならばなおさらでは?」。穏やかながらも確信しているかのようなしっかりとした声で語るジョン・ヘインズさん(62)=ウィスコンシン州在住。米議会に「アメラジアン」の渡米を可能にする法制定を働き掛けている退役軍人だ。

娘のジャネットさんと孫5人を米国に呼び寄せようと米議会に働き掛けている元軍人のジョン・へインズさん=米ワシントンDCの写真展会場

 2011年、ある日突然「私はあなたの娘です」と名乗る女性からネットを通じて連絡を受けた。最初は何かの詐欺かと思い全く聞く耳を持たなかった。それでも諦めず2年間もメッセージを送り続けてきたジャネットさんについにはDNAテストを受けてもらい、本当に娘であったことが判明した。1973年、最終寄港任務を終え帰国する寸前に付き合っていたフィリピン人の女性が身ごもった子だった。 

 生活が貧しかったジャネットさんの母は彼女を祖母に預け働きに出た。ジャネットさんは一時期、孤児院にいたこともあったという。今では42歳の5人の子を持つ母だ。

 「お父さんに娘と認めてもらい、つながれただけでうれしい」と喜ぶジャネットさんに、ジョンさんは「孫の教育のために」と送金するようになった。次第に娘と孫の6人をアメリカに呼び寄せることを考えるようになったという。

 「こんな年になって知った娘や孫を海外から呼び寄せることに不安がないといえば嘘(うそ)になる」というジョンさん。自らも孤児院にいた経験を振り返り、「それでも愛情を必要としている家族を拒むことほど愚かなことはないという思いに行き着いた。うまくいく保障はなくとも、やってみる意思がある者には試す権利が与えられていいと思うんだ」

 持病と付き合いながら娘家族を合法に呼び寄せる方法を模索、奔走する生活が始まった。弁護士の助けとともに法案を提出し、地元の下院議員に提案者になってもらうところまでこぎ着けた。法案では、退役軍人の親が、遺伝子検査で親子関係が証明できた満18歳以上の子が渡米を希望する場合、その子を呼び寄せ、永住権取得資格を与えることを可能にする。

 「外国にいる帰還兵の子を呼び寄せることはこれまで『移民問題扱い』されてきたけど、僕に言わせれば『退役軍人の問題』。アメラジアン救済活動を行う団体や米国で影響力のある『アメリカベトナム帰還兵の会』も『アメリカン・リージョン(米国在郷軍人団)』からも支援の是認を得られた」と話す。

 フィリピンには米軍人と現地の女性との間に生まれた子が5万人以上いるといわれている。83年の「アメラジアン移民法」の87年の「アメラジアン帰還法」施行においてはベトナム、カンボジアやタイなどから多くが米国に渡ったが、どちらの法律もフィリピン、沖縄と日本を除くものだった。今回の法案H・R・1520は駐留先国によって区別・差別せず、沖縄と日本含むすべての米軍基地がある国も該当する。

 今回の取材で沖縄にも似たような境遇の人たちがいる状況を知ったジョンさんは「米国に住む沖縄系の皆さんもぜひ在住地区の議員に電話して法案の提案者を引き受けるよう促してほしい」と話している。