盆栽はまったくの門外漢ながら、均整の取れた枝ぶりや、悠久の歴史を感じさせる風格に目を奪われた。縁遠く思えたが、盆器(鉢)が沖縄からもたらされたと聞いた途端、不思議と親近感が湧く

▼九州各県の地元紙の東京報道部長とともに皇居を見学する機会があった。坂下門をくぐり、宮内庁前を過ぎて、しばらく進むと「大道(おおみち)庭園」が見えてくる

▼盆栽や観葉植物を栽培・保管している庭園は、敷地8千平方メートルに500鉢以上の盆栽が並ぶ。沖縄から献上された盆器は三つ。中でも樹齢390年の黒松「鹿島」は別格とされ、「国賓をもてなす際、宮殿に飾られる」(宮内庁担当者)という名品だ

▼盆器は「琉球焼御紋章入円盆」。円い形に緻密な紋章が刻まれている。明治時代に伏見宮家が特別に注文したもので、龍のようにも見える立体的な模様は存在感が際立つ

▼皇居には、約100年間で昭和天皇即位式の一度しか使われていない馬車や、今は動かないものの戦前に皇族が乗っていた車両が、手入れの行き届いた状態で保管されている。使用頻度を問わず、伝統と格式を重んじ、継承していくことが皇室の皇室たるゆえんだろう

▼外国の賓客が宮殿で出迎えられる時、傍らに鎮座する沖縄生まれの焼き物。齢(よわい)を重ねた老木とともに、日本文化の代表として輝きを放っている。(西江昭吾)