「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が、きょう参院本会議で審議入りする。

 政府は「共謀罪」の名称を「テロ等準備罪」と改め、適用対象はテロ組織や暴力団など「組織的犯罪集団」と説明している。しかし組織的犯罪集団の定義は依然として曖昧だ。恣意(しい)的な捜査によって正当な活動をしている市民が対象となる恐れが消えない。

 今月9日、中城村議会は法案の廃案を求める意見書を賛成多数で可決した。「県民の正当な反基地、平和運動が真っ先に標的となり、激しい弾圧の対象となるのは火を見るより明らか」と指摘し、基地負担の軽減を求める市民らの抗議活動が標的とされることを懸念する。その後に意見書を可決した北谷町議会も同様の危惧を訴える。

 辺野古のゲート前で続く市民らの新基地建設反対運動が、組織的威力業務妨害罪に当たるとして立件される可能性が指摘されているのだ。

 自民党法務部会の古川俊治部会長は、テレビ朝日の番組で、新基地に反対する市民がトラックを通さないよう座り込む抗議行動について「具体的な計画をもって行えば適用対象となる可能性がある」と明言した。

 国策に異を唱える団体を取り締まろうとする政権の思惑が露骨だ。恐らくそれが政府の本音なのだろう。

 自由な言論活動が監視の対象となれば、市民運動は萎縮し民主主義は後退する。参院の審議を通し組織的威力業務妨害罪の立法事実を問いただす必要がある。

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 英国のマンチェスターで22日に起きた自爆テロ事件を引き合いに、「だから法案が必要」との声が与党内から聞こえてくる。だがこの法案は本当にテロ対策を目的としたものなのか疑問である。

 法案には277の罪が盛り込まれているが、直接テロ対策とかかわるものは一部だ。

 テロ対策に名を借りて個人の「内心の自由」に土足で踏み込み、捜査機関の権限を拡大してプライバシーを脅かす「超監視社会」を招くようなことがあってはならない。

 先週、法案は採決が強行され衆院を通過した。共同通信の世論調査で8割近くが政府の説明は不十分だと答え、各地の人権問題を調べる国連特別報告者は「深刻な欠陥がある」と批判している。

 治安維持の性格を持つ法律は歯止めがなければ成立後に必ず一人歩きする。テロ対策というのであれば、現行法でできること、できないことをまずはっきりさせるべきだ。

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 衆院の審議では金田勝年法相の不十分な説明、政府側の一貫性を欠いた答弁が続き、法案を採決するような状況ではなかった。

 数の力による与党の強引な委員会運営も目に余る。

 特定秘密保護法、安保関連法の時もそうだったが、今回の「共謀罪」法案や森友学園、加計(かけ)学園問題の審議を通して浮き彫りになったのは、行政府に対する監視・けん制機能を失った「国会の形骸化」である。

 「良識の府」の真価が問われる。