政府は参院選後初めてとなる臨時国会を3日に召集する。会期は3日間で実質審議は行わない。

 通常、参院選後の臨時国会は正副議長の選出や委員長の人事が中心だ。

 しかし岸田文雄政権は、安倍晋三元首相の銃撃事件からわずか1週間後、安倍氏の国葬の実施を決めた。法的根拠はなく、特例扱いする理由も定かではない。さらに国葬の費用は全額税金でまかなわれる。

 野党は、政府から国葬についての説明がないなどとして会期中の予算委開催も要求したが当然だ。

 こうした意見に対し、与党幹部は「国民の声とかなりずれている」と批判した。だがずれているのは、国会での説明は必要ないという政府の認識だろう。

 共同通信の全国電話世論調査によると、国葬に「反対」「どちらかといえば反対」が計53・3%を占め、「賛成」「どちらかといえば賛成」の計45・1%を上回った。多くの国民が国葬に違和感を抱いている。国葬に関する国会審議が「必要」とする回答は61・9%に上った。

 臨時国会を巡っては、自民党が予定していた安倍氏の追悼演説も、秋の臨時国会以降へ先送りになった。

 野党党首が担う慣例を無視して甘利明前幹事長の起用案を出したものの、甘利氏の言動がきっかけで党内からも異論が出たためだ。

 国葬や追悼演説については、国民への丁寧な説明こそが求められる。独断での実施は議会制民主主義の軽視だ。

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 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政界の関わりの解明も急がれる。

 野党側は、立憲民主党や日本維新の会が所属議員を対象に教団との関係の有無について実態調査結果を公表した。

 一方で岸田内閣の3閣僚をはじめ、教団の関係者と議員の接点が目立つ自民党は、内部調査に消極的だ。福田達夫総務会長は「何が問題かよく分からない」と述べた。

 2015年、当時の下村博文文科相の下で、旧統一教会の名称変更が受理されたことに疑惑が浮上している。名称変更は「霊感商法」などの負のイメージを払拭しようと教団が1990年代から要望していた。長年認められなかった変更が、なぜ認められることになったのか。

 安倍氏の銃撃事件をきっかけに表面化した政界と旧統一教会の関係は、むしろ国会の責任で解明すべきだ。

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 2017年に野党が求めた臨時国会の召集を、当時の安倍内閣は3カ月以上放置し訴訟に発展した。菅義偉前首相も21年、国会延長要請を拒否し、野党から内閣不信任決議案を提出された。

 「自民1強」を背景に審議を避ける手法は、たびたび国会軽視と批判されてきた。

 岸田首相は、自民総裁選の当選後の第一声で「特技は人の話をしっかり聞くこと」と言った。首相として少数意見を含め話を聞く場こそが国会であろう。

 議論は民主主義の土台だ。会期を確保し審議を尽くすべきである。