「40、50人も人数が集まれば1人ぐらいは異論家はいる。いるのが当然でもある。その1人ぐらいの異論を同化できぬ己を恥じろ」。幕末の志士、坂本龍馬の言葉だ
▼組織を束ねるリーダーへの警句だろう。異論に耳を傾け、説明責任を果たすことで相手を説得し信頼関係を高める。周囲の異論はリーダーを育てる上で不可欠といえる
▼この組織はどうか。異論家は皆無で、リーダーに気を使い組織防衛に終始している姿が目立つ。学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐる問題への自民党の対応を見て思う
▼安倍晋三首相の「意向」があったとする文書の存在を証言した前文科事務次官の証人喚問を拒み、火消しに奔走している。首相自身にも真相を究明しようとの姿勢は見られない
▼こんなロシアジョークがある。恐怖政治で知られたソ連の独裁者・スターリンの死後、1956年の党大会で彼を批判するフルシチョフ第1書記に会場から「その時、あなたは何をしていたのか」との声が飛んだ。「今発言したのは誰か」と問うが返答がないのでこう答えた。「そう、今のあなたのように黙っていた」と
▼安倍1強の政治状況下では、「沈黙は金」ということか。野党の追及に迫力がない中では有権者が声を上げるしかない。リーダーを「暴君」に育てるのは沈黙である。(稲嶺幸弘)