看板に偽りなし。沖縄科学技術大学院大学(OIST)から発表される研究成果に接するたびに意を強くする

▼2001年に構想が持ち上がった時、設立の理念として掲げられた合言葉は「ベスト・イン・ザ・ワールド(世界最高水準)」。実現性に懐疑的な意見が圧倒的だった。提唱者の尾身幸次元沖縄担当相も「99%の人が不可能という反応だった」と振り返っている

▼ところがどうだ。今や世界初の発見や実用化が期待される成果が次々と生まれている。OISTの制度設計が政治の場で議論されている時、取材に携わった身として、隔世の感がある

▼産声を上げるまでの道のりは紆余(うよ)曲折をたどった。08年、自民党の無駄遣い撲滅プロジェクトチームは「費用対効果が不明確」と指摘し、計画の見直しを求めた。翌09年には、設立の根拠法案に民主党が反対の姿勢を示して成立が危ぶまれ、政権交代後も関連予算の執行停止という憂き目に遭った

▼難産の末に誕生したOISTは世の中の厳しい見方を「結果」を出して打ち破った。でも、まだ通過点だろう。目指すべき理想は、米シリコンバレーのようにベンチャー企業が集積し、地域の経済発展にも貢献する「知の拠点」だ

▼沖縄からノーベル賞受賞者を-。かつての「見果てぬ夢」は、現実味を帯びた「目標」に変わった。(西江昭吾)