社説

社説[首里城運営 県移管へ]地元との関係を大切に

2017年6月7日 07:25

 政府は、国営沖縄記念公園にある首里城の運営を2018年度中に県に移す方針だという。今後、県と具体的な移行条件を詰めていくことになるが、単なる国の経費節減策であってはならない。

 沖縄戦で消失した首里城は、琉球大学の西原移転に伴い国の予算で復元され、1992年に開園した。運営移管は安倍政権になって唐突に出た話ではない。

 民主党政権下の2012年5月、宜野湾市で開かれた復帰40周年記念式典で、野田佳彦首相は首里城を「18年度をめどに県に移譲する」ことを明らかにした。

 当時、県民の中には「琉球王国のシンボルである首里城を取り戻す」という発想から、県への移譲を歓迎する意見があった。地元の声に応えて県への移譲を打ち出した形だが、政府の中で各種経費の削減圧力が高まっていたことも見逃せない。

 一方で、復元作業にかかわった県内の専門家からは、懸念する声が聞かれた。

 「復元を終えたあとも、当初の想定以上に、メンテナンスに費用がかかることが分かった。維持管理にけっこう経費がかかるので(県移管に)不安を覚えていた」と県立博物館・美術館前館長の安里進さんは言う。

 政府は台風被害や経年劣化などによる大規模改修に備えて所有権を維持し、費用負担を支えていく意向だという。

 まずは今後の維持経費を精査する必要がある。国が引き続き所有権を保有するのであれば、維持経費についても応分の負担をするのが筋だ。

■    ■

 首里城で国営公園になっているのは正殿など城郭内だけである。

 県が18年度から城郭内の運営を引き継ぎ、城郭外の県営公園と一体的に利用することができれば、新たな利用法を打ち出すことによって収益増につなげることは可能だ。

 その分、大きな責任を負うことにもなる。観光客向けのイベントの質をどのように高め、付加価値を生み出していくか。県の力量が試される。

 17年度に盛り込んだ「美福門」再建の予算が復元整備費としては最後の予算になるという。ただし、首里城公園の周りには、数多くの戦災文化財があり、これらの復元が終わるわけではない。

 琉球国王の跡継ぎの邸宅だった中城御殿跡(旧県立博物館跡)などの復元事業は、まだ道半ばである。

 首里城公園周辺の交通渋滞の解消も避けて通れない課題である。

■    ■

 周辺住民にとって首里城の存在は「誇り」になっているだろうか。県民は琉球王国のシンボルともいえる首里城の存在をどのように受け止めているのだろうか。気になるのは、地元客が少ないことだ。 安里進さんは「技術」という視点から見ることによって、首里城を身近に引き寄せることができる、と言う。

 「復元整備を通して明らかになってきたことは、沖縄の昔の技術。失われた技術が復元され、復活しつつある」

 県の主体的な取り組みによって首里城を「身近な存在」にすることが期待される。

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