大河のように流れ去った民衆の歴史の深部には逆流に抗した思想の水脈が沈み込み、いつしかそれが不死鳥のように生き返ることがある。

あま世へ 沖縄戦後史の自立にむけて(法政大学出版局・2916円)

 1956年からの沖縄の「島ぐるみ闘争」は72年の「復帰」実現によってひとつの到達点を迎えた。

 本書は、戦後沖縄の民衆思想の中に伏在した70年前後以降の「反復帰」論や沖縄自立論・憲法構想等の地下水脈に特異な手法で迫ったものである。

 「具体的な何人かの人の生き方と他者との出会いや別れを、ひたすらたずねていく方法で」戦後沖縄の歩みをとらえだそうとする試みである。

 第1部は、編者の一人である森宣雄氏の新川明、川満信一、松島朝義の各氏に対するインタビュー構成で《我の自覚史》ともいうべき、それぞれが形成してきた思想と行動の個人史が語られる。読者は、自分が立ち会った同時代に人知れず苦闘してきた彼らの生きざまに触れることができるだろう。

 第2部には、彼らが出会った伝説的な思想家であり、島ぐるみ闘争のたぐい稀(まれ)なオルガナイザーでもあった国場幸太郎の思想について、冨山一郎氏の「国場幸太郎における民族主義と『島』」及び鹿野政直氏の「沖縄史の日本史からの自立-傷みの歴史から『あま世』の希望」が収められている。

 国場幸太郎は53年東京大学経済学部を卒業して帰郷後、瀬長亀次郎が大衆的支持を集めていた沖縄人民党に入党し、中央委員として活躍。米軍の武力土地接収に対する伊佐浜の闘いに深く関わり、過酷な米軍支配下の55年CICに拉致され拷問を受けた。59年には路線対立で人民党を追われ、本土で生を終えた。彼の「沖縄の党」の思想は「オール沖縄」の一つの水脈だろう。

 第3部の7人の座談会は各話者が何を思い「あま世(理想社会)」を求めていかに闘うべきか、射程の長い思想の交錯だ。未来を構想する若き独立論者たちの道標ともなろう。翁長雄志知事が埋め立て承認取り消し処分を取り消した昨年の「12・26」を経て今に至る辺野古問題に対し、状況的評論にとどまらない編者らの歴史観が本書の構成に表れている。(仲宗根勇・元裁判官)

 【編者紹介】もり・よしお 同志社大〈奄美-沖縄-琉球〉研究センター学外研究員▽とみやま・いちろう 同志社大教授▽とべ・ひであき 東京経済大准教授▽執筆者=川満信一、新川明、松島朝義、鹿野政直