[リポート’22 糸満発]
沖縄県立糸満市立潮平小学校近くの県道82号の住民が、長年冠水被害に悩まされている。多い年で年に数回、腰の辺りまで増水し、車両が水没する被害も発生。市が6億5千万円をかけて雨水管を整備した直後の今年5~6月にも起きた。市は雨水が流れ込む水路にあるマングローブや土砂も関係するとみて、撤去に向けて県と調整を始めている。
(南部報道部・又吉健次)
「見た瞬間、えーっと思った。市が3年間かけて大きな工事をしていたので『もう大丈夫だろう』と考えていた」。今年5月31日の豪雨で軽自動車が水没した女性(60)は諦め顔で振り返った。私用で豊見城市を訪れたわずか数時間での出来事だった。車は廃車処分した。
被害を受けるのは住民だけではない。冠水を知った地域住民が水たまりに入らないよう交通規制しても、進入してエンストする事例は少なくない。
道路かさ上げ
複数の住民によると、一帯は50年以上前から大雨が降ると冠水してきた。もともと低地で周囲は畑だったといい、潮平公民館のある東方の高台から雨水が流れ込んでくる地形が原因だ。
復帰前は、糸満を南北に走り幹線道路に当たる現・県道256号でも冠水が度々発生。車を通行させるために50年ほど前、道路のかさ上げ工事があったという。そのため、公民館がある高台側と県道256号の間にある県道82号の200メートルが、水のたまりやすいくぼ地となった。
想定超える雨
潮平の冠水は県道82号のほか、潮平小周辺でも発生する。市や地元自治会によると、原因となる雨水は北波平や阿波根、豊見城市保栄茂の土地改良区からも流れ込み、より低地の県道82号へと移動する。
糸満市も手をこまねいていたわけではない。2019~21年度には6億5千万円をかけて白川1号幹線整備工事を行い、県道82号のくぼ地と海を結ぶ1・3メートル四方の雨水管を増設。10年に一度の雨水「1時間当たり88ミリ」に対応できるはずだが、それでも発生した。
原因として考えられるものが想定を超える豪雨だ。5月31日の豪雨は南城市玉城と佐敷付近で1時間に110ミリの「記録的短時間大雨情報」が発表されていた。また、糸満市内で宅地建設が進んだことで雨水が土中に浸透しなくなったことも影響している。
マングローブ
市が雨水放流先に考えている西崎東水路はもともと埋め立て地。市は6月、海底を管理する県が責任を持つべきだとして、土砂のしゅんせつを求める要望書を県に提出した。土砂の上には高さ5~6メートルのマングローブが生え、場所によっては3分の2ほどをふさいでいる。大雨が降ると橋の真下まで水がたまることもあるといい、土砂や植物が排水を滞らせる原因とみられている。
一方、県は「現場には陸上からの水が流されており、機能維持を必要とする市が対応するべきではないか」としている。9月5日の会合では結論は出ず、再度話し合うことになった。
市は潮平地域に流れる雨水を分散させるため、阿波根交差点から西崎東水路につながる「白川2号幹線」の一部工事も年度内に着手する予定だが、さらなる減災にはもう少し時間がかかりそうだ。