台風が来ると、肉が売れる? 台風11号が接近した先月末から今月初めにかけて、スーパーの肉売り場で売り切れが相次いだ。保存食とは正反対の生ものなのに、なぜなのか。理由を探ると、近年の沖縄で台風への備え方が変わっている可能性が見えてきた。(社会部・棚橋咲月)
■店長も理由わからず
「全部売り切れです」。猛烈な台風11号が接近していた8月31日。サンエー那覇メインプレイス食品館で、大城忠店長が真っ先に見せてくれたのは肉売り場だった。「台風の前は肉がよく売れます」。仕入れは通常より増やしており、売り切れの理由はよくわからないという。
棚にパックはほぼなく、店員が補充しようとするそばから買い物客がかごに入れていく。鶏肉を手にした女性(46)は「買おうとは思ったが、理由を考えたことはなかった」と話した。
サンエーによると、8月30、31両日と前週の23、24両日の売り上げを比べた場合、精肉コーナーはこの店で約1・7倍、食品館全店で約1・5倍。非常食にもなるカップ麺と袋麺は全店で約8倍だった。
台風11号は、沖縄地方を南下してから北上し、長期間停滞した。沖縄本島に再び接近した9月3日にあらためて店の肉売り場を訪れると、売り場はやはり品薄になっていた。サンエーによると、状況は時間帯や店によって変わるという。
■今買っておこうと?
2018年に沖縄に住む男女1180人に台風への意識調査を実施した琉球大農学部の中村真也教授は「私の家族も肉を買う」と話し、原因を推測する。
台風に備えるための買い物は、2~3日分がめどだ。(1)同じ生鮮食品でも野菜は種類が多いため、売り場で品切れが目立ちにくい(2)野菜は日持ちするので冷蔵庫に残っている(3)肉は消費期限が短いため、備蓄のためというより、しばらく外出できないため他の商品に付け加えて今買っておこうという人が集中し、結果的に売り切れる-という可能性を挙げた。
さらに考えられるのが、長期間にわたる停電の減少だ。設備や技術の向上で、「数十年前より長期停電の頻度が下がり、生鮮食品を駄目にする心配が減って買いやすい環境が生まれたのでは」と推し量る。
サンエーの精肉担当バイヤー玉城勝洋さんは「肉がここまでなくなることはなかった。台風11号の場合は停滞による長期化を警戒し、特需があったのでは」と話した。