たまに、夢の中で高校時代の弓道部の仲間と弓を引いている。白黒の的に狙いを定めて引き絞る。無心になって雑念が遠のいていく瞬間を思い出し、目が覚めても懐かしさが残る
▼近的の射距離は28メートル。開け放しの道場は寒風が抜けて体が震えるが、弓を引いている間は寒さも消えるため、冬場は練習の矢数が増えた。それほど集中力のいる競技なのに、今も落ち着きのない身が情けない
▼射法「八節」と呼ばれる動作の締めは「残身(心)」。矢が離れた後、そのままの姿勢で数秒、留める。的を射抜いても決してにやけず、ガッツポーズも道場の外で。一連の流れを重視し、心身の美徳を重んじる武道ならでは
▼競技人口は少ないものの先日、浦添高2年の洲鎌洸平君が全国大会で初優勝した。予選から17射皆中とは肝の据わり方が半端ではない。皆が息を詰める中、頂点を射止める強心臓は頼もしい
▼弓道に限らず、スポーツ界で高校生の活躍が続いている。プロバスケットボールの琉球ゴールデンキングスには、北谷中卒の津山尚大君(福岡大大濠高3年)が入団、高校野球では糸満高がセンバツ切符を手にした
▼「残身」も美しいが昨今の残酷なニュースにやり場のない怒りを覚えるたび、笑顔が弾け全身で喜ぶ彼らの姿に救われる。それぞれの舞台で大いに活躍してほしい。(儀間多美子)