豊臣秀吉が千利休に庭の満開の朝顔を見たいと所望した。秀吉が庭を訪ねると、朝顔はすべて引き抜かれ、茶室に一輪の朝顔が生けられていた。千利休は、客人がたとえ権勢をふるっていた時の権力者でもおもねることはなく、自らの美を貫いて迎えた。「朝顔の茶会」として伝わる逸話である

▼この逸話を聞いたのは、2013年末、星野リゾートの星野佳路代表の講演だ。客のニーズだけにとらわれず、こだわりを伝えるおもてなしの原点として紹介していた。経営する「星のや 軽井沢」にはテレビを置かなかった

▼15日に読谷村で講演した星野代表は、観光客が増え続けると対応が追いつかず、満足度の低下やリピーターの減少を招くと指摘した。観光地のブランド力を維持する努力が必要と呼び掛けた

▼ハネムーンのメッカと呼ばれながらもその後客足が遠のいた先例もある。星野代表の指摘のように、他の地域にはない魅力を見いだし、磨き続けることが生き残りにつながる

▼基地問題と沖縄経済などの誤解の検証をテーマにした沖縄大土曜教養講座で、来場者から観光客の増加による交通渋滞や水使用量の増加、ごみ問題に強い関心が示された

▼順調に観光客が伸び続ける今、快適な県民生活と訪れた人々の高評価が両立できる沖縄観光の展望と環境整備が求められている。(与那原良彦)