内閣府男女共同参画局「おとう飯(はん)始めよう」キャンペーンが12日、スタートした。「おとう飯」とは、簡単で手間を掛けず、多少見た目が悪くてもおいしい料理のこと

▼料理をしたことがないとか、苦手意識がある男性が台所に立つ心理的ハードルを下げるのが目的だ。6歳未満の子どもがいる夫の家事関連時間の国際比較調査によると、日本人は67分で、3時間以上あるスウェーデンやノルウェーの約3分の1。男性の家事参画時間増加に向け「まずは料理を」との発想である

▼だが子育て世代に「料理は苦手」な男性がそんなにいるのだろうか。同僚や、子どもの通う小学校の保護者に聞くと、特に共働き世帯の男性は普通に料理をしているし、子どもの弁当作りもする

▼「おとう飯」が進まないのは個人の「意識」だけではない。背景には、家事をしたくても、その時間がないという日本企業の長時間労働の慣行がある

▼キャンペーン開始のちょうど1週間前、厚労省労働政策審議会の分科会は繁忙月の残業時間上限を100時間未満などとする報告書をまとめた

▼年720時間の上限には休日労働を含めない「抜け穴」がある疑問符付きの報告書だ。男性の家事参画を本気で実現したいなら、簡単な料理の作り方をPRする前に、「長時間労働是正のレシピ」をまとめたほうがいい。(玉城淳)