[リポート’22 沖縄市発]
沖縄市の八重島自治会前会長の男性が、同自治会や、男性が会長を務めていた沖縄市自治会加入促進協議会(促進協)の資金を私的に流用した問題で、市は沖縄署へ告訴・告発に向けた準備を進めている。着服資金には、市の補助金も含まれていた。各団体では再発防止策を講じるなど、信頼回復や今後の組織の在り方を模索している。(中部報道部・屋宜菜々子)
一連の事案が発覚した発端は、促進協の資金着服だった。男性は5月下旬から6月上旬にかけて、キャッシュカードを使い計191万円を引き出した。その中には、市からの補助金も含まれていた。
促進協では通帳とキャッシュカードを事務員が、銀行印を会長が管理していたが、会長が事務員に代わり通帳を記帳した際、通帳と一緒に入っていたキャッシュカードを使用して私的流用に至った。
各自治会では、不正防止のためキャッシュカードを作っていないが、促進協は会長と事務員の勤務場所が離れているため、利便性向上のために作成していた。
今回の事案を受けて、促進協はキャッシュカードを破棄。通帳と銀行印の管理者を分け、出金時には役員の承認を得るなど、個人の意思のみで引き出せないように改善策を図り、男性を除名処分とした。
後任は決まらず
八重島自治会の関係者によると、促進協の事案発覚後、男性が自治会の資金も私的流用していたことを自治会役員に申し出た。着服資金には、市からの自治会運営補助金なども含まれていた。
同地域は人口約800人、約300世帯と小規模な自治会だ。2018年に会長を引き受ける人が誰もいない状況の中、男性が会長に立候補した。関係者によると、男性は子どもの居場所づくりや文化の継承などに尽力していたという。
予算を組む余裕のある自治会では事務員などを雇い、会長以外が通帳や資金を管理している。
関係者によると、八重島は小規模な自治会のため予算が限られ、その中から事務所などの土地代や保安灯の維持費を捻出。役員手当に充てられるのは年間16万円程度といい、事務員を雇う余裕がなく、会長が資金管理も一人で担っていた。
関係者は「予算があれば分業体制をとれるが、予算がないため会長の良心に委ねることになる」と、小規模自治会の運営課題を指摘。「働きながら会長や資金管理をするのは難しい」と自治会役員の負担の大きさにも言及した。現在は、通帳と印鑑をそれぞれ別の役員が管理している。
前会長の男性は9月に会長を辞任。10月25日時点で後任は決まっていない。自治会事務所の土地契約が9月で切れ、移転を模索しているが場所が見つかっていない状況で、新会長の選定や拠点確保など、課題が山積している。
市は「捜査に影響する」として男性の流用額を公表していない。これまで市が自治会長に委託していた事務は、市職員が行っている。
信頼で成り立つ
市内の自治会長でつくる市自治会長協議会の幸喜愛会長によると「他の自治会では、通帳と印鑑は別の人が管理している」といい、個人の意思のみで資金を引き出せないようにしている。今回の事案を受け、各自治会長と改めて、通帳と印鑑の管理者を分けることなどを再確認。再発防止の意識を高めている。
幸喜会長は、自治会加入率が低く、自治会長のなり手が見つかりにくい現状に、今回の事案は逆風になったと懸念。「自治会は信頼で成り立ち、自由度があるため、行政では手が届かない人の支援ができる」と意義を強調。防災や防犯面に触れ「自治会は人が生きていくために必要最低限で、共に守っていく組織だ」と話し、信頼回復に努めていく考えだ。