本書に掲載された写真に登場する人々は、沖縄戦でどれだけの悲しみを背負ったのだろうか。また生き延びた人々は戦後どのような人生を歩んだのだろうか。切り取られた日常の1コマはたくさんの日々の中の一瞬であろう。悲惨な体験の多くは氷山の下に隠れている。肉親の死も見えない。写真の背後に浮かび上がる多くの人々のかけがえのない人生を想起すると一瞬たじろいでしまう。

写真から見る名護の沖縄戦-『名護市史本編3 名護・やんばるの沖縄戦』資料編1-(名護市教育委員会・千円)

 本書は名護市史編さん委員会が発行したもので2016年に発行した本編『名護・やんばるの沖縄戦』を補完する「写真記録集」である。構成は3章から成り立っている。第1章「戦争への道」、第2章「戦場から民間人収容地区へ」、第3章「名護博物館に収蔵された戦争資料・遺物」である。貴重な写真が見事に配置されており、時系列的に戦争を考える工夫がなされている。

 それにしても、米軍が写した村々の空中写真を数多く使い、その下で生活する人々の様子を対比するかのように提示した本書は、私たちの想像力を激しく喚起する。それはあたかも爆弾を投下し、機銃掃射をしたパイロットたちの人間としての想像力をも問いかけているようでもある。空から遠い距離にある小さな集落には、人間の姿は見えなくても、かけがえのない命の営みがあるのだ。愛する人々との必死の暮らしや、手を携えた家族との豊かな物語が紡がれているのだ。戦争はこれらの物語を一気に奪ってしまうのだ。

 私には、とりわけ第2章の「山を下りる避難民」や「民間人収容地区」の写真は衝撃的だった。幼い子供たちの笑顔やうずくまった母親の不安なまなざし、そして各収容所の見取り図などは、やはり貴重な資料になるはずだ。

 「歴史は繰り返される」と言われるが、ここには繰り返してはならない歴史の証言がある。本書の発行に見られるような地道な作業を持続することが平和をつくっていくことに繋(つな)がるのだろう。関係者の努力に敬意を表したい。(大城貞俊・作家、大学非常勤講師)

 名護市史編さん委員会は中村誠司委員長ほか、島袋正敏、島袋伸三、平良次子、幸地光男、田仲康嗣の5氏