先日、美術・工芸書の古書店「言事堂」10周年のトークイベントに司会として参加した。店主・宮城未来さんがこの10年を語った。アート活動としての古書店のあり方に感銘を受けた。数日後、沖縄で9年ぶりに個展を開催していた山城知佳子さんの最新作の上映会に足を運んだ。上映後のトークを聞きながら、沖縄のアート事情にはまったく疎いのであるが、既視感があった。そういえば沖縄のアートってなんだろうと考えていた頃があったなぁと。

「Wander」ボーダーインク・各315円~432円

 思い出したのは、かつて僕が編集していた雑誌「Wander」の32号(2002年)で「特集 お隣りの沖縄アート」と称して、アーティストの花城郁子さんにインタビューしたことだ。当時彼女は、創作活動の他に1990年代から沖縄のアートシーンをテキスト化してネットで公開したり、「県立美術館建設問題」にも積極的に発言したりしていた。前島アートセンターも活況を呈していたので、「なんとなく目を凝らせば、おぼろげに見えてくるかも、沖縄のアート・シーン」と、いろいろお話をうかがったのだ。

 2004年36号では、当時、沖縄のお墓の前で1人で踊って、その姿を自ら撮影するというパフォーマンスをしていた山城知佳子さんにインタビューしている。05年37号では、その「OKINAWA墓庭クラブ」という作品の写真を4ページにわたって紹介している。

 「Wander」は、ボーダーインクが創立した1990年に、コラム&インタビューマガジンとして創刊し、季刊から不定期刊になりながら2005年38号まで続いた。その時々、僕が興味を持っていた沖縄の様々(さまざま)なシーンに反応して特集を組み、「沖縄そば」から「基地問題」まで、サブカルチャー的な視点で捉えるという試みだったが、最後は力尽きたという感じで終刊した。しかし雑誌も10年、20年経(た)つと、古酒のように熟成されて、ふんわりと記憶の香りが甦(よみがえ)ってくるのである。(新城和博・ボーダーインク編集者)