1935年の説明に「ノミを使って造られる刳舟(くりぶね)」とある1枚。工房の両端には板材が立てかけられており、刳舟といっても丸木をくりぬく「丸木舟(マルキンニ)」ではなく、板材を張り合わせる「接ぎ舟(ハギンニ)」であると分かる。漁法や何人用か、イノーの内、外のどちらで使うかなどで職人の数だけ特徴が異なるとされた。同年は日露戦争(1904~05)から30年の節目で、旧海軍がバルチック艦隊を発見した山原船の船頭、サバニで急報を伝えた5人の計6人を「沖縄六勇士」(大阪朝日新聞、同年2月25日など)として表彰し、軍の宣伝に使った。サバニに乗った漁師は、沖縄戦でも切り込み隊や伝令にされた(写真はいずれも朝日新聞提供)
1935年の説明に「ノミを使って造られる刳舟(くりぶね)」とある1枚。工房の両端には板材が立てかけられており、刳舟といっても丸木をくりぬく「丸木舟(マルキンニ)」ではなく、板材を張り合わせる「接ぎ舟(ハギンニ)」であると分かる。漁法や何人用か、イノーの内、外のどちらで使うかなどで職人の数だけ特徴が異なるとされた。同年は日露戦争(1904~05)から30年の節目で、旧海軍がバルチック艦隊を発見した山原船の船頭、サバニで急報を伝えた5人の計6人を「沖縄六勇士」(大阪朝日新聞、同年2月25日など)として表彰し、軍の宣伝に使った。サバニに乗った漁師は、沖縄戦でも切り込み隊や伝令にされた(写真はいずれも朝日新聞提供)
全ての写真を見る 2

【サバニ職人】舟の機能美とことん追求 宮崎産「飫肥杉」使いぜいたくに

2017年7月2日 21:38
文化・芸能

 1935年の写真群には糸満でサバニを造る工房が写っている。金づちでノミをたたき、木を彫る音が聞こえてきそうな光景に、サバニ職人になって約50年の大城清さん(67)=糸満市西崎=は見入った。

 「貼り合わせた板のくびれとふくらみは、高波の力を受け流すためのもの。座る板を載せるでっぱりは削り出し。後で部材を接着するよりも余分に木も手間もいるが、丈夫だ」と82年前の職人技を読み解く。

 荷車が運ぶサバニの材料、宮崎県産の「飫肥(おび)杉」が写った写真もある。断面を見て「年輪に偏りがなく、まっすぐ。軽く扱いやすい舟ができる。こんないい木、今は選べない」と、うらやんだ。

 サバニ造りに、ぜいたくな材料や手間をつぎ込んだ時代、舟は漁の成果に直結した。職人は腕を競い、舟主も機能美を求めた。いい舟に、いい乗り手という組み合わせは、最高の性能を引き出した。

 予選を勝ち抜いて旧暦5月4日の祭事、ハーレーに舟を出せれば、3年間は豊漁間違いなしとされた。大城さんは「逆に、不格好だと肥えを運ぶのに使われた」と聞いたことがある。

 漁や漁船の近代化が進み、65年ごろは糸満に「13人ぐらいはいた」(大城さん)というサバニ作り職人も、現在は60代の職人2人だけに。用途も漁から観光、スポーツ用にと変化した。

 大城さんは「時代が変わっても、糸満の象徴。この戦前の写真には、機能美を突き詰めるヒントが詰まっている」と話した。(「1935沖縄」取材班・堀川幸太郎)

全ての写真を見る 2

写真集「沖縄1935」発売

 戦火に包まれる前の沖縄がよみがえります。待望の写真集が朝日新聞出版から全国販売。「糸満」「那覇」「久高島」「古謝」と地域ごとに章立てされ、82年前の人々の生き生きとした様子が鮮明なモノクロ写真で紹介されています。

 ■朝日新聞出版

 ■A4判変型

 ■1,800円(税抜)

  全国の書店のほか、大手通販サイトamazon等でも購入できます。

写真集 沖縄1935
写真集 沖縄1935
posted with amazlet at 17.08.08

朝日新聞出版 (2017-07-31)
売り上げランキング: 550
関連ニュース

「工事をしても冠水は解消されないのでは」住民は排水路の効果を疑問視 糸満市、説明会で「白川2号幹線」に理解求める

「市議からパワハラ」 と複数の市職員が訴え 糸満市、全職員を対象に調査へ 年内にも

「料理を通して愛を届けたい」看板はさっぱりチキン南蛮 だし骨の肉をほぐして煮たカレーも人気